三人目のピント
錦織汀が在原柊介に告白する放課後、私はカメラ係に任命された。
「成功したら記念写真。失敗したら遺影」
「失恋で死なないで」
「じゃあ苑子が骨を拾って」
「撮影より仕事が増えてる」
笑いながら屋上へ上がったが、鴨志田苑子――つまり私も、柊介が好きだった。
一年生の文化祭で同じ実行委員になり、三人でいることが増えた。汀は彼の前だと早口になり、私は逆に黙った。親友が好きだと打ち明けた夜、私は「応援する」と答えた。あれは友情ではなく、先に言われた人間の卑怯な逃げ道だった。
柊介が来ると、汀は制服の裾を握った。
「好きです。付き合ってください」
風の音まで止まった気がした。
柊介が口を開く前に、汀が私を見た。
「苑子も言って」
「何を」
「私だけ正直にさせないで」
隠せていたと思っていた。けれど親友には、シャッターを切る前の指の震えまで見えていた。
私はカメラを下ろした。
「私も、柊介が好き」
初めて名前で呼んだ。たったそれだけで、三人だった時間が戻れない形に変わった。
柊介は長く黙り、それから汀へ向き直った。
「錦織と、付き合いたい」
胸の中で何かが落ちた。音はしなかった。
「写真、撮るよ」
二人をフェンスの前に立たせた。最初の一枚は涙でピントがずれた。二枚目は、笑っている汀と、照れて目をそらす柊介が、残酷なくらい鮮明に写った。
彼が先に帰ったあと、汀が言った。
「ごめん」
「謝ったら、私が譲ったみたいになる」
「違うの?」
「違う。私も選ばれるつもりで言った。負けただけ」
汀は泣き、私も泣いた。抱きしめるには少し腹が立っていて、離れるには好きすぎたので、肩だけをぶつけて階段を下りた。
帰宅して写真を整理すると、一枚目のぼやけた画面の端に、窓ガラスへ映った私がいた。泣きながら、それでも二人へカメラを向けている。
ファイル名を〈三人目〉に変えた。
写真の中心には入れなかった。
けれどあの告白の瞬間、私の恋も友情も、確かに同じ光の中にあった。