三本目の傘
六時間目の途中から、窓は雨で白くなっていた。
終礼が終わると、教室中が一斉に天気予報への文句を言い始めた。傘を持ってきたのは、私たち三人のうち私だけだった。
昇降口で立ち尽くす親友と、私たちが同じように好きな人。その事実を知っているのは、親友と私だけだった。先週、帰り道で「たぶん好き」と打ち明けられ、私も「実は」と返した。笑って公平に頑張ろうと言ったものの、公平の方法など決めていなかった。
「三人で入る?」
好きな人が言った。透明な傘は二人でも狭い。三人なら肩が全部濡れる。
私は傘を親友へ押しつけた。
「図書室に忘れ物した」
「一緒に待つよ」
親友がすぐ言った。その優しさが、今日は苦しかった。
「返却期限、今日だから。先に行って」
嘘だった。借りている本などない。
好きな人は少し迷い、それから傘を開いた。親友が入ると、二人の肩が近づいた。校門までの道は水たまりで光り、透明な傘の向こうで二人の口が動いた。
私は昇降口の柱に隠れ、見えなくなるまで待った。
校舎へ戻るふりをして、誰もいない廊下を歩いた。窓ガラスに映る自分の顔は、雨に濡れていないのに濡れているように見えた。
図書室の前まで来たところで、親友からメッセージが届いた。
『本、見つかった?』
返事を打てずにいると、もう一通来た。
『傘、明日返す。今日はごめん』
何に対する「ごめん」なのか、聞かなくても分かった。傘の下で、何かが進んだのだ。
私は『気にしないで』と打ち、送信する前に消した。
代わりに、
『明日、ちゃんと話そう』
と送った。
外へ出ると、雨は少し弱くなっていた。私は鞄を頭に載せて走った。制服が濡れれば、家で泣いた理由を雨のせいにできる。
翌朝、親友は返した傘を差し出しながら、赤い目で言った。
「告白された」
私は笑おうとして失敗した。
親友も泣きそうな顔をした。
私たちは傘を間に置き、始業ベルが鳴るまで何も言わなかった。好きな人を失った瞬間より、親友を失うかもしれない時間のほうが怖かった。
最後に私が言った。
「おめでとうは、今日じゃなくていい?」
親友はうなずいた。
「うん。傘も、今日は私が持つ」
晴れているのに、彼女は透明な傘を開いた。私たちはその下へ二人で入り、濡れていない廊下を教室まで歩いた。