三行目の盾

轟鎧王ベルギオの槌が振り下ろされ、御舟トオマの前衛がまとめて吹き飛んだ。

《見習い守の円盾》

防御力:3

半径五メートル以内の全生命へのダメージを無効化。

装備者を除く。

「また盾役が死んだ!」

円盾を持った仲間だけが床へ沈み、周囲の者は無傷だった。三行目を読み飛ばした攻略隊は、不良品だと決めつけて倉庫へ押し込んでいた。

トオマは盾を拾い、ベルギオへ走る。防御力三では槌を一度も受けられない。

「それを捨てろ!」

仲間の声を無視し、トオマは盾を王の足元へ投げた。ベルギオには、最も近い装備品を強制装着する《武具徴収》の習性がある。金色の腕が円盾を拾い、左腕へ固定した。

青い光が広がる。

王を中心とした五メートルの全生命が保護され、攻略隊のHP減少が止まった。除外されるのは装備者であるベルギオだけだ。

「全員、懐へ!」

遠距離職まで王の足元へ飛び込む。槌の衝撃波も炎も、盾の円内ではゼロになる。一方、こちらの攻撃はベルギオへだけ通る。

王は盾を外そうとするが、《武具徴収》した装備は戦闘終了まで解除できない。自分が奪った最弱盾に守られないまま、四方から斬撃を受ける。

残りHP一。トオマはとどめを止めた。

ベルギオの背後で、崩壊していた避難門が起動している。盾の保護円に入ったNPCたちが、一人ずつ外へ逃げていた。

王を倒せば戦闘終了となり、盾は外れ、残った避難民が炎に焼かれる。

トオマたちは攻撃をやめ、ベルギオを生かしたまま最後の住民が門を越えるまで囲み続けた。

《轟鎧王討伐:未達成》

《見習い守の円盾による保護人数:三百二名》

最後の避難民が門を越えると、ベルギオは自分から槌を置いた。王冠の内側には《住民を守る者を王とする》という文があり、円盾を装備した彼の保護人数が王位判定へ加算されていた。

トオマたちは王を倒さず、王自身の装備履歴で圧政を終わらせた。三行目は持ち主を見捨てる欠陥ではない。最も危険な一人だけを安全圏の外へ置くための但し書きだった。

《攻略目的を更新――王を倒す戦闘ではなく、王だけを保護対象から外して住民を逃がす防衛戦でした》