体育倉庫の予約表

「またボールが足りない。守屋、おまえが盗んだんだろ」

放課後の体育倉庫で、バスケット部主将の久瀬拓真は、部員全員の前に守屋澪の鞄を放り投げた。中から新品のボール用空気針が三本転がる。

「備品を持ち帰るなんて最低」

取り巻きが笑う。澪は用具係になってから、濡れた雑巾を机に置かれ、練習着を隠され、それでも毎日、倉庫の数を合わせてきた。今日だけは鞄まで調べられた。澪が部活を休めば、拓真は「逃げた」と学級連絡へ書き、来れば皆の前で持ち物を漁る。顧問へ相談した記録も、なぜか毎回なくなっていた。

「私の物ではありません」

「証拠は鞄にある。反省文を書け。退部もな」

拓真は倉庫の予約表を引き寄せ、紛失時刻の欄に自分の名を書いた。

『十六時十分、守屋を問い詰めるため入室』

顧問に、自分が現場を押さえたと示すつもりらしい。澪はその筆跡を見て、静かに扉脇の端末へ学生証をかざした。

「予約表を電子照合します」

「好きにしろ。俺の署名が決定的だ」

端末には、倉庫の電子錠と備品棚の開閉記録が同時に映った。空気針の棚が開いたのは十五時四十八分。使用者は久瀬拓真。澪が校舎へ入ったのは十六時二分だった。

拓真の顔が引きつる。

「貸しただけだ。誰かが俺のカードを」

「その説明も保存されます」

澪が指した予約表には、薄い青の校章が浮いていた。用紙は今月から、記入者の指紋と声を転写する試験紙に替わっている。拓真は知らずに、自分で入室時刻と目的を書き、いま弁解まで録音したのだ。

扉が開き、校長と生活指導主任が入ってきた。主任の手には、澪が三か月分提出していた破損・紛失報告と、同じカード番号が並ぶ一覧がある。報告は消されたのではなく、校内監査箱へ複写されていた。

拓真は澪を睨んだ。

「告げ口したのか」

「報告しただけです。あなたが今日、完成させました」

校長は青い透かしの浮いた予約表を読み上げ、最後の一枚をめくった。

「久瀬拓真。継続的ないじめ、備品窃盗および証拠捏造により、本日付で無期停学とする」