先生を埋めた放課後

放課後、榛谷澄人は園芸倉庫の裏で、同級生二人の声を聞いた。

「昨日、俺たちで先生を埋めた」

「校長には絶対言うなよ」

「分かってる。顔が出たらまずいから、かなり深くした」

澄人はじょうろの陰で凍りついた。

担任の蘇芳先生は、今日まだ教室へ来ていない。しかも二人は園芸部員で、スコップの扱いに慣れている。

澄人は学級委員の埜中へ相談した。

「警察を呼ぶべきだ」

「まず事実確認よ。どこへ埋めたって?」

「畑の端らしい」

「動機は?」

「昨日、先生が二人を補習に残した」

「十分すぎるほど弱い動機ね」

「人は追試で道を踏み外す」

「あなたも先週追試だったでしょう」

「だから心理が分かる」

二人は物陰から聞き耳を立てた。

「朝見たら、少し頭が出てた」

「土を足す?」

「いや、掘り返して向きを変えよう」

「傷つけるなよ。品評会に出すんだから」

埜中の顔から血の気が引いた。

「品評会?」

「犯行を作品として発表する気だ」

「そんな文化祭は中止よ」

二人は生徒会長と用務員まで呼んだ。話すたび、事件は大きくなった。

「先生は何時ごろ?」

「昨日の夕方」

「運搬方法は?」

「一人が頭、一人が足では」

「袋は?」

「肥料袋を使った可能性が」

用務員がうなずく。

「土は最近柔らかくしてある」

生徒会長が震えた。

「完全犯罪向きの校庭……」

五人はスコップを持ち、園芸部の畑へ踏み込んだ。

「動くな!」と澄人。

園芸部員二人が振り返る。

「何だ、その人数」

「蘇芳先生をどこへ埋めた」

「ここだけど」

「認めたな!」

一人が畝を指した。土から、白っぽい丸いものが少しのぞいている。

埜中が悲鳴をこらえる。

「頭……」

その時、背後から蘇芳先生本人が現れた。

「君たち、私の〈先生かぶ〉を踏まないでくれ」

園芸部員が土を払うと、出てきたのは人の顔に似た大きなカブだった。蘇芳先生が育種し、勝手に自分の名を付けた新品種だという。

澄人はスコップを下ろした。

「先生、今日はなぜ教室に?」

「有給だ」

埋まっていたのは先生ではなく、先生の自信作だった。