六人掛けを半分ずつ

 両親が離婚すると決めたとき、最後まで揉めたのは子どものことでも家でもなく、六人掛けの食卓だった。

 亡くなった祖父が、二人の結婚祝いに作った楢の一枚板。誕生日も喧嘩も、母の再就職祝いも、全部その上に載っていた。

「私の部屋には入らない」

「こっちもだ」

「じゃあ捨てるの?」

 娘が聞くと、父は鋸を持ってきた。

 板が真ん中から切られる音を、兄妹は廊下で聞いた。

「家族まで切るみたい」

 妹が泣き、兄は父を睨んだ。

 二つになった食卓は、母と妹の家、父と兄の家へ運ばれた。切り口には父が金具を埋め込み、外せる脚をつけた。

 それから七年、二つの食卓は別々の暮らしを覚えた。

 母の側には化粧品の染みができ、妹が受験勉強で刻んだ鉛筆の跡が増えた。父の側には熱い鍋の輪と、兄が初任給で買った酒をこぼした染みが残った。

 家族四人がそろうことはなくなった。

 祖母の米寿祝いで、本人が言った。

「最後に、あの食卓で食べたい」

 四人は二つの家から半分ずつ運び、集会所でつないだ。

 七年の湿気と乾燥で、切り口はぴたりとは合わなかった。中央に指一本ぶんの隙間が残った。

「削れば合う」

 父が工具箱を開くと、母が止めた。

「もう、同じ形じゃないもの」

 場が凍った。

 けれど母は、責めるようには言わなかった。

「無理に元へ戻さなくていい。金具で留まるなら、それで」

 兄が隙間へ細長い板を渡し、妹がその上に祖母の好物を並べた。

 食事の途中、父と母は昔の喧嘩を始めかけ、祖母に同時に叱られた。兄は仕事の愚痴を話し、妹は来年結婚すると報告した。

「式では、この食卓を使いたい」

 妹が言うと、父は驚いた。

「縁起が悪くないか」

「壊れたんじゃなくて、二つになっただけでしょう」

 祝いのあと、食卓はまた半分ずつ、それぞれの家へ戻った。

 家族も一つの家には戻らなかった。

 それでも必要な日には、違う染みを持った二枚が運ばれ、中央に小さな隙間を残してつながった。

 その隙間は失敗の跡ではない。

 もう互いを押しつぶさずに並ぶため、家族が覚えた距離だった。