午前二時の共有アルバム

「嫉妬で仕事を壊す女とは、もう暮らせない」

結婚写真スタジオの創立記念パーティーで、遼真はそう言い切った。隣には、新人モデルの莉世が腕を絡めている。妻の美冬は受付係のように壁際へ立たされ、百人の取引先の視線を浴びていた。今夜は、遼真が《真実を写す会社》という新方針を発表する大切な夜でもあった。壇上には、彼自身が考えた宣伝文句――《一枚たりとも改竄させません》――が輝いている。

「莉世とは昨日からだ。別居を決めた後だから浮気じゃない。美冬が騒げば名誉毀損で訴える」

遼真は得意げに大型スクリーンを指した。そこには彼が開発した撮影管理システムが映っている。

「うちの画像は撮影時刻も撮影者も改竄できない。証拠があるなら出してみろ」

その言葉を待っていたわけではない。美冬はただ、昨夜届いた自動通知を思い出しただけだった。夫が家族用アカウントから自分を外そうとしたため、共有アルバムの管理権限が共同契約者へ戻ったのだ。

「では、未整理フォルダを開いてください」

遼真が鼻で笑い、自分で操作した。

映ったのは、海辺のホテルで抱き合う二人だった。窓ガラスには、遠隔シャッターを押す遼真の姿まで反射している。右下には三か月前の日付。撮影者欄には彼の社員番号。さらに画像へ埋め込まれた青い透かしが、スタジオ機材の私的使用を示していた。取引先の端末にも検証用データが同時配信され、会場のあちこちで一致を告げる緑の表示が点灯した。

遼真は慌てて削除を押した。だが彼自身が売り文句にしていた通り、原本は消えない。次の一枚には、莉世が彼の結婚指輪を指先でもてあそいながら笑う姿があった。

「これ、奥さんに見つかったら?」

動画の音声に、遼真の声が重なる。

『あいつは機械に弱い。全部俺の会社になるまで黙らせておくさ』

会場の最前列で、最大取引先である婚礼会社の代表が立ち上がった。美冬は何も頼んでいない。代表はすでに、遼真が自分で投影した管理番号を契約書と照合していた。

封筒が開かれる。

「契約倫理条項第八項および機材横領の確認により、撮影責任者・遼真へ、本日付の解雇通知を読み上げます」