卒業写真に六人

 高校の卒業式が終わった日に、病院から手紙が届いた。

 十八年前、同じ産室で生まれた二人の赤ん坊の識別帯が入れ替わっていた可能性が高いという。後日の検査で、その「可能性」は事実になった。

 母は結果用紙を握りしめ、私へ何度も謝った。

「お母さんのせいじゃない」

「でも、あなたのお母さんじゃなかった」

「その言い方、やめて」

 私が怒鳴ると、母は泣くことさえ我慢した。

 もう一方の家族と会ったのは、病院の会議室だった。向かいに座った少女は、私と同じ日に生まれたとは思えないほど雰囲気が違った。私は短い髪で、彼女は腰まである。私は甘いものが苦手で、彼女は紙袋いっぱいの菓子を持ってきた。

 大人たちは、誰が誰に似ているかを確かめるように互いの顔を見た。

「二人だけで話していい?」

 彼女が言った。

 廊下の自動販売機の前で、私たちは缶ジュースを買った。彼女は炭酸、私は無糖の茶。

「交換する気、ある?」

 冗談のように聞かれ、私は吹き出した。

「部屋の片づけが面倒だから、ない」

「私も。うち、門限厳しいけど、今さら知らない家の規則を覚えたくない」

 笑ったあと、二人とも黙った。

「でも、生んだ人には会いたい」

「うん」

「育てた人を取らないって、先に約束しよう」

「誰も取れないよ。十八年分、重すぎる」

 会議室へ戻り、私たちは席を入れ替えなかった。

 その代わり、月に一度、六人で食事をすることにした。最初の夕食で、もう一人の母が私の皿へ苺のケーキを置いた。

「誕生日にはいつもこれを焼いていたの」

 たぶん、私に食べさせるはずだった味だ。

「ごめんなさい。甘いもの、苦手で」

 言うと、彼女は一瞬固まり、それから笑った。

「知らなかった。これから覚えるね」

 育ての母は私の前へ塩味のクラッカーを置いた。説明もせず、いつもの量だった。

 私はケーキを一口だけ食べ、残りを向かいの少女へ渡した。彼女はクラッカーを半分くれた。

 春、二人の卒業写真を撮り直した。

 写真館の人が「ご両親はこちらへ」と言い、四人の大人が同時に一歩出て、同時に止まった。

「全員、入ってください」

 私たちは笑った。

 写真の中央には、交換されなかった二人の娘がいる。

 その後ろに、失った十八年を取り戻そうとする親と、積み重ねた十八年を手放さない親が並んでいる。

 誰が本当かではなく、これから誰と家族でいるかを写した、六人の最初の写真だった。