四人目の予約
毎年、私たち四人の誕生日は、私が店を決める。
だから今年、礼央たち三人だけの写真が流れてきた時も、予約ミスだと思った。
写真の窓の形だけで店名は分かった。学生時代から、店選びは私の役目だった。予算の違いで誰かが惨めにならないよう金額をそろえ、恋人のいない子が窓側で夜景を見なくて済むよう席まで指定した。
私はメニューを開かず、礼央には白身魚、残る二人には肉をよく焼いて、と店員に告げた。三人の体調も好みも、私のほうが知っている。礼央が甲殻類を食べたのは中学以来ないし、芙由は失恋すると甘い物を二つ頼む。そういう変化を見逃さないから、四人は続いてきた。
「今日はご予約がありません」
店員の声に、私は笑った。先月まで、四人分の予約確認は必ず私に届いていたのに。
もう一つおかしかったのは、三人ともグラスを持つ手が左だったことだ。私が写真を撮る時は、指が太く見えるから右手を下ろして、と教えてきた。わざと逆らっている。
翌週、礼央を呼び出した。彼女は一人では来ず、ほかの二人と弁護士を連れてきた。
「もう、私たちの予定を決めないで」
私は決めていない。候補を一つに絞り、予約し、遅刻しそうなら位置情報を見てタクシーを呼び、太った子にはデザートを外しただけだ。礼央が交際を始めた時も、相手の勤務先へ匿名で注意を送った。傷つく前に守るためだった。
礼央は、私が共有カレンダーから削除した旅行、勝手に断った結婚式、家族へ送った体調記録を並べた。
「三人で会ったんじゃない。三人で、あなたから抜けたの」
弁護士が接触を控えるよう告げた。紙の下には、三人がそれぞれ私へ返す合鍵、共有口座のカード、位置情報タグが並んでいた。タグは去年の旅行で荷物をなくさないため、私がバッグの裏へ縫いつけたものだ。外す必要などないのに、三人とも糸まできれいに切っていた。
礼央たちは席を立ち、初めて私に背中を向けた。店員は何も聞かず、三人分のグラスだけを片づけた。
私は店を出て予約アプリを開いた。
来月の欄にはまだ、「四名・窓際・代表者 宮坂朋香」と残っていた。