報酬欄から消えた七人

黒曜巨人の膝が砕けた瞬間、帆足セイガの頭上からギルド紋章が消えた。

《レイド報酬》

戦闘開始時に登録されたギルドメンバーへ分配します。

途中加入・途中脱退は反映されません。

「除名完了。これで山分けは幹部だけだ」

通信越しにギルドマスターが笑う。セイガを含む七人の新人は、巨人の脚を三時間押さえ続けた。最後の一撃だけを幹部が奪い、報酬確定の直前に除名したのだ。

セイガは怒鳴らず、巨人の胸へ登った。アイテム説明の文言を、戦闘前から覚えていた。

途中脱退は反映されない。

紋章が消えても、報酬対象から外れたとは書いていない。

巨人の核が露出する。マスターが神剣を振り上げた。

「新人はそこで見てろ」

セイガは木槌で核の留め金を叩いた。ダメージは一。だが留め金が外れ、巨人の胸から巨大な契約板が落ちる。そこには《登録ギルド:白冠旅団》《登録メンバー:二十六名》と、戦闘開始時の名簿が残っていた。

神剣が核を割り、討伐音が鳴る。

幹部の報酬欄に金貨が開く。次の瞬間、七人分を独占しようとした追加取り分が赤字へ変わった。戦闘開始後の除名は分配人数を減らさない。むしろ、ギルド管理権限を使って登録者を切った手数料が、除名を実行した者の報酬から差し引かれる。

セイガたちの所持品欄へ、正規の分け前と巨人の契約板が届く。

「返せ。それはギルド資産だ」

マスターが叫ぶ。

契約板の所有者欄には、最後の一撃を入れた者ではなく、巨人を倒れないよう支えていた七人の名が並んでいた。

《黒曜巨人討伐成功》

《戦闘開始時登録者二十六名へ報酬を分配》

除名された新人の一人が、届いた金貨を見て泣いた。額が多いからではない。戦闘開始時の名簿に自分の名が残っていたからだ。

団長は加入時、「新人は替えが利く」と言って番号で呼んだ。けれど契約板には、巨人の足を押さえた秒数、回復薬を渡した回数、倒れた仲間を起こした位置まで記録されている。

セイガは管理権限を受け取ると、最初に除名履歴を消さず公開した。裏切りを忘れないためではない。切られても働いた事実が消えない仕組みを、次の戦闘でも残すためだった。

《ギルドマスターによる途中除名を“報酬詐取”と認定――白冠旅団の管理権限を、除名された七名へ移譲します》