席順は私が決める
亜弓は、昔から無自覚に人の場所を取る。
四人で食事をすれば中央へ座り、誰かが褒められれば「私も似たことあった」と話を重ねる。本人は明るくしているつもりらしい。大学時代、私が好きだった先輩とも、相談に乗るふりをして付き合った。
だから同窓会の幹事を任されたとき、私は席順を慎重に決めた。
亜弓の席だけ柱の陰にしたのは、彼女が余計な注目を浴びないため。名札を旧姓で印刷したのは、離婚のことを皆に詮索されないためだ。受付で亜弓が「今は朝比奈じゃないよ」と言ったので、私は笑って名札を胸へ貼ってあげた。
「そのほうが、みんな思い出しやすいから」
もう一つ、彼女のグラスだけノンアルコールに替えておいた。薬を飲んでいると聞いた気がしたし、酔ってまた誰かの話を奪えば嫌われる。亜弓は注文票を見て首をかしげたが、「私が頼んだよ」と言うと礼を言った。
会が始まると、亜弓は柱の陰でも人を集めた。転職先で企画賞を取った話を聞き、皆が拍手した。私はすぐ、彼女が休職していた時期のことを補足した。成功だけ聞けば、苦労せず評価されたように見えるからだ。
「梨央は変わらないね」
亜弓は穏やかに言った。
褒められたのだと思った。私はいつも、彼女の足りない説明を埋めてきた。離婚したときも、元夫から相談されていたことを皆に話し、亜弓だけが悪者にならないよう「どっちもどっち」と整えた。転職の際には、採用担当の友人へ、彼女は精神的に波があるけれど見捨てないで、と先に頼んだ。
帰り際、亜弓が封筒をくれた。再婚式の招待状だった。
「今度は、席を自分で決めたいの」
会場案内の下に、小さく注意書きがあった。
〈新郎新婦の過去について、本人の許可なく説明される方はご入場いただけません〉
私は苦笑した。そんな人が来る可能性まで考えるなんて、相変わらず被害者意識が強い。
翌朝、同窓会の集合写真を共有すると、亜弓からだけ返信がなかった。
柱の陰へ立たせたはずの彼女を、私は公開前にきれいに切り取っていた。