捨て盾は空まで受け止める

盾兵オズロの席は、勇者隊の食卓にはなかった。

戦闘では最前列に置かれ、報酬の分配になると「攻撃できない者は半人前」と外へ出される。今日も勇者は、王都上空に現れた天穿つ隕石を見て、オズロの古い鉄盾を笑った。

「それで空でも支えるつもりか?」

技能欄も、長年その嘲笑を裏づけてきた。

【職業技能《肩代わり》:半径十歩以内の仲間一人が受ける攻撃を、自身の盾へ移す。】

守れるのは一人だけ。軍勢戦では外れ技能だ。そう決めつけられ、オズロは勇者隊から王都防壁の留守番へ追いやられた。

だが今、宮廷魔術師の結界は隕石の熱だけで蒸発し、勇者の光剣も届かない。落下地点は王都中央。十万人の命が一撃で消える。

人々が門へ殺到する中、オズロだけは防壁の守護核へ走った。石柱に刻まれた古い文字を、毎日の点検で覚えていた。

《王都防壁は守備隊に属する一個の守護体とする》

一個。

人間とは書いていない。

オズロは守護核へ手を当てた。技能の対象欄に、これまで一度も選ばなかった名が浮かぶ。

――仲間一人:王都。

「俺の後ろにいるなら、一人でも十万人でも同じだ」

隕石が雲を焼き抜いた瞬間、王都を砕くはずだった赤い軌道が折れた。石そのものではない。落下という攻撃、その速度と衝撃だけが、オズロの鉄盾へ吸い込まれる。

盾を石畳へ突き立てた。

轟音が地下へ走り、城壁の外で山が一つ沈んだ。オズロの両足は膝まで地面へめり込む。鉄盾には細い亀裂が入ったが、王都の窓一枚割れなかった。

勢いを失った隕石は、広場の噴水へ雪のように静かに落ちた。

さっきまで逃げていた勇者が、盾の後ろで口を開けている。オズロは振り返らず、亀裂の入った盾を持ち上げた。

広場では、母親が泣きながら子を抱き、老人たちが折れた盾へ触れようと手を伸ばした。これまで盾兵を半人前と記した分配板から、勇者隊の名だけが音を立てて剥がれ落ちる。オズロの名は、守られた王都そのものの欄へ刻まれた。

【職業《盾兵》が上位職《天蓋要塞》へ書き換わりました。】