校門の影が重なるまで

終礼が終わっても、僕らはすぐには帰らなかった。

明日、彼はこの町を出る。父親の転勤で、二学期から別の学校へ行く。クラスでは昼休みに送別会をしたし、色紙も渡した。みんなの前では何度も「また遊ぼう」と言えたのに、二人きりになると何も言えなくなった。

昇降口を出ると、街はオレンジ色だった。校門から商店街まで、僕らの影が長く伸びている。

「影だけなら、隣町まで届きそうだな」

彼が言った。

「隣町どころじゃないだろ。転校先まで伸ばせよ」

「無理。途中で夜になる」

くだらない会話に安心した。いつもどおりなら、別れもいつもどおりに終わる気がした。

校門の前で立ち止まる。僕は右、彼は左へ帰る。三年間、毎日ここで別れてきた。けれど今日だけは、どちらも先に曲がろうとしなかった。

夕日が低くなり、二本の影が少しずつ長くなる。最初は平行だった。それが道路の傾きで近づき、門柱のあたりで重なった。

「ほら、届いた」

彼が影を指した。

僕は笑った。笑うしかなかった。夕焼けがきれいすぎて、今日を記念日にしようとしているみたいで腹が立った。

「向こうでもサッカーやる?」

「たぶん」

「レギュラー取れよ」

「お前こそ補欠から上がれ」

言い返そうとしたら、喉が詰まった。彼も同じだったらしく、急に靴先を見た。

さよならと言えば、本当に終わる。だから僕らは、次の土曜にオンラインで試合をする約束や、借りた漫画の返し方や、転校先の制服が格好悪いらしいという話を続けた。

街灯が一つ点いた。

重なっていた影の境目が見えなくなった。

「じゃあ」

彼が言った。

「うん」

「また明日」

明日は会えない。それでも、僕も同じ言葉を返した。

彼は左へ、僕は右へ歩いた。

振り返ると、彼も振り返っていた。互いに片手を上げる。体は離れていくのに、夕暮れの長い影だけは、しばらく校門の前で重なったままだった。

やがて夜が来て、影は同時に消えた。

終わったのではなく、見えなくなっただけだと、そのときは信じることにした。