灰を喰う刃

巨人が膝をついたとき、礼拝堂の鐘はまだ鳴っていた。

ベルグラムは剣を抜いたまま、瓦礫の向こうを見た。祭壇の下には子どもが三人。巨人の胸には浅い裂け目が一本。倒れたふりだ。あれは鐘が七つ鳴るまで息を潜め、救いに近づいた者から喰う。

右手の感覚はもうなかった。

《灰喰らい》は何でも斬る。その代わり、刃を振るうたび使い手の熱を飲む。指先から、腕、胸へ。熱をすべて失った肉は、血も骨も残さず灰になる。

「あと一度だ」

司祭は止めた。彼の唇は青く、呼気すら白かった。

ベルグラムは笑ったつもりだった。頬が動いたかは分からない。鐘が五つ目を打つ。巨人の瞼がわずかに持ち上がり、倒れた石像の隙間から、濁った眼が子どもたちを測った。

六つ目。

ベルグラムは礼拝堂の中央へ歩いた。足跡の形に霜が咲く。巨人が跳ね起き、梁を砕きながら腕を振り下ろした。彼はその腕の内側へ潜り、胸の裂け目に剣を差し込んだ。

刃が心臓へ届くには、もう一振り必要だった。

幼い声が祭壇の下で、「寒い」と言った。

ベルグラムは柄を握り直した。昔、同じ声で娘がそう言った夜、彼は外套を掛けてやれなかった。戦へ急いでいたからだ。帰ったとき、寝台は空だった。

以来、ベルグラムは暖炉のそばでも手袋を外さなかった。温かなものに触れると、守れなかった小さな指の感触が蘇るからだ。《灰喰らい》を選んだのも、凍えて死ぬなら、あの夜の娘に少し近づける気がしたからだった。

「今度は、間に合う」

最後の鐘と同時に、剣を横へ薙いだ。

巨人の胸が開き、黒い心臓が二つに落ちた。巨体は子どもたちへ届く寸前で崩れ、礼拝堂に土煙が満ちた。

静寂の中、いちばん小さな子が這い出した。ベルグラムの手を取ろうとして、司祭に抱き止められる。

「触れてはいけない」

立っていたのは、剣を構えた人の形の灰だった。胸の奥に残った最後の赤だけが一瞬明滅し、それも消えた。

風が割れた天井から吹き込む。

灰の指がほどけ、子どもの足元に、まだ温かな外套だけが落ちた。