熔鉱炉に落ちた主命

「新しい所有印を打て。そうすれば、その騎士はお前の命令だけを聞く」

王立武具庫の監督官は、焼き鏝をエルマへ押しつけた。

鎖につながれた騎士ヴァルクは、上半身をさらして膝をついている。胸の中央には、剣を縛る蛇の呪印。前の主人が死んだため、次の所有者を待つ印だけが赤く脈打っていた。

王都一の鍛冶師であるエルマが呼ばれたのは、その印を彼女の紋へ打ち替えるためだ。従順な護衛を褒美として与える――監督官はそう言った。

エルマは焼き鏝ではなく、細い鑿を取った。

「何をする」

「この印、皮膚に描かれてない。薄い魔鉄を埋め込んである。なら、鍛冶仕事だ」

蛇の頭が所有者、尾が騎士の心臓につながっている。頭だけを砕けば、呪いの行き場がなくなり、尾から心臓を焼く。だから誰も契約を壊せず、上から別の印を重ねてきたのだ。

エルマはヴァルクに尋ねた。

「痛むよ。たぶん、今までで一番」

「命令ですか」

「違う。説明だ。やめてほしければ、首を振って」

騎士は初めて顔を上げた。灰色の目が、ほんの少し揺れる。

それから、ゆっくりうなずいた。

エルマは胸の魔鉄を熱し、蛇の頭から尾までを一つの輪として浮かせた。監督官が止めるより早く、鎚を振り下ろす。

甲高い音。

砕けたのは騎士の心臓ではなく、赤熱した蛇だった。

鎖が床へ落ちる。

「立て!」と監督官が叫んだ。

ヴァルクは動かない。

「そいつを斬れ!」

やはり動かない。

エルマは炉の裏口を開けた。

「自由だ。剣も持っていけ。ここへ戻る必要はない」

ヴァルクはしばらく自分の胸を押さえ、やがて剣を拾った。誰にも礼を言わず、裏口から夕暮れへ消えた。

その夜、エルマが一人で鎚を振っていると、戸口に靴音が戻ってきた。

ヴァルクは抜き身ではない剣を、柄をこちらへ向けて金床に置く。

「これは俺の剣になった。刃こぼれを直してほしい」

「代金は?」

「護衛一人分の働きで払う。雇うかどうかは、あなたが決めろ」

差し出された手のひらには、もう誰の印もなかった。