狼除けの白い杭

山裾のロシュ村では、冬になると狼が家畜小屋まで下りてきた。昨年は羊が九頭、鶏は数え切れないほど失われた。それでも前領主が集めた「防壁税」は、石一つにならず消えていた。

新しい代官セラドは、村を囲う大城壁の図面を破った。

「守るのは国境ではありません。今、狼が通る西の獣道だけです」

広場に置いた板へ、必要な白樫の杭が百二十本、縄が十束、工期が六日と書く。負担は家畜を十頭以上持つ家が二口、それ未満が一口。家畜を持たない家は免除。ただし一口は銀貨一枚か一日の作業、どちらでもよい。集めた額と使った額は毎夕、同じ板へ追記する。

大羊飼いのバルガが鼻を鳴らした。

「俺が四十頭持つなら、金を多く出す代わりに、俺の囲いだけ先に守れ」

「多く出しても門の鍵は買えません。鍵は村に一つ、順番もありません。全部つながって初めて壁です」

その返事を聞いた未亡人メーダが、黙って大鍋を運んできた。

「私は免除なんだろう。でも杭を打つ人の昼飯くらいは煮られるよ」

すると家畜のない桶屋が縄を編み、子どもたちは白い小石を集めて杭の根元へ敷いた。命令書は一枚も出ていない。夕方になるたび板の数字だけが増え、残額だけが減った。

三日目、掲示板の銀貨が一枚合わなくなった。セラドは作業を止め、全員の前で伝票を数え直した。原因は釘代を二度記した自分の誤りだった。彼は赤線で訂正し、余分を箱へ戻した。役人の間違いまで隠されないと知ると、バルガは翌朝、私有林から最も真っ直ぐな杭を二十本運んだ。『鍵はいらん。だが曲がった壁も御免だ』とだけ言って。

六日目の夜、森で低い唸り声がした。狼の影が獣道を駆け、白樫の列の前で止まる。何度か往復したのち、鼻先を雪へ落として森へ引き返した。

誰も勝ち鬨を上げなかった。羊飼いたちは静かに戸を開け、無事だった群れを数えた。

翌朝、メーダの孫が入口の杭に小さな板を結びつけた。

――この門から、みんな帰る。

白い杭の向こうで、最初の羊の鈴が鳴った。