王命より熱い芋
王都の土壌鑑定官だったアデルムは、「北の穀倉地は三年で痩せる」と報告して追放された。
代わりに与えられたのは、辺境の石だらけの土地と、煙突の傾いた小屋だった。誰もが罰だと言ったが、彼には土が嘘をつかないだけで十分だった。
移り住んでから百日目。朝露の残る畑で、アデルムは鍬を最初の畝に差し込んだ。
小屋の屋根にはまだ穴が二つあり、柵も東側は縄のままだ。畑の向こう半分には石が白く顔を出している。それでも、この一列だけは毎日水をやり、葉の裏の虫を取り、遅霜の夜には毛布まで掛けた。
今日は開拓の完成日ではない。広い土地のうち、わずか一列に植えた芋を掘るだけだ。
土を起こすと、丸いものが一つ転がった。小さい。だが傷がなく、薄茶の皮に朝日が乗っていた。
二つ目は拳ほど。三つ目は子芋を三個連れていた。
土の奥から次々に丸い実りが現れるたび、アデルムは誰も見ていないのに籠へ丁寧に並べた。大小を選別する監督も、形の悪いものを捨てる料理長もいない。曲がった芋まで、今夜の食事だった。
王宮では数字でしか見なかった収穫が、ここでは掌に重い。湿った土の匂いが鼻に満ちるたび、追放の日に浴びせられた笑い声が遠ざかった。
一列を掘り終えたころ、伝書鷹が柵に降りた。脚には金糸の封筒。
封蝋は王家の獅子だった。
『鑑定官アデルムに帰還を命ず』
表に書かれた一行だけで事情は読めた。報告どおり、王都の畑が駄目になったのだろう。
アデルムは封を切らず、芋籠の下に置いた。風で飛ばないようにするには、ちょうどよかった。
夕方、掘りたての一個を洗い、濡れたまま炉の灰へ埋めた。隣では塩漬け肉が鉄板でじゅうじゅう鳴っている。
やがて芋の皮がぱりりと裂けた。割ると白い湯気が立ち上り、土と火の匂いが小屋を満たした。落とした山羊乳のバターが、金色に溶けていく。
外では鷹が催促するように一声鳴いた。
アデルムは木匙を取り、熱い芋をふうふう吹いた。
「王命にも、食べ頃というものがある」
封蝋が夜気に冷えていく横で、彼は最初の収穫を口へ運んだ。芋は、王都で食べたどんな宴の料理より熱かった。