竜小屋はひとつの寝床

「寝床を人肌にするだけ? 無能というより湯たんぽだな」

開拓庁の鑑定官は、ネルサの札へ灰色の印を押した。

【技能:《寝床ぬくめ》――触れた寝床一つを、夜明けまで自分の体温と同じに保つ】

人間の布団なら火鉢で足りる。戦闘にも採掘にも使えないと、彼女は北端の廃牧場へ追いやられた。

そこには、行き場を失った魔物が六匹いた。どれも人里では厄介者と呼ばれたものばかりだ。火を怖がる幼い火蜥蜴、片翼の夜梟、鼻先の欠けた岩猪。それに、納屋ほど大きな老いた地竜である。ネルサは藁を敷き、朝は薬草を刻み、夕方には皆の背を順番に撫でた。村人は「魔物小屋」と呼んだが、ネルサにとっては静かな家だった。

冬至の夜、百年ぶりの白嵐が来た。

雪は扉の隙間を一刻で埋め、薪は濡れ、火蜥蜴の腹の炎さえ消えかけた。村の家畜小屋では仔馬が凍え、避難してきた人々が竜小屋へ押し寄せる。最後に現れたのは、巡察中の火竜公オルディスだった。彼の騎竜も翼を凍らせ、立てずにいた。

「せめて仔だけでも助けろ」

オルディスは三十頭の獣と百人近い村人を見て言った。

ネルサは納屋の床へ手を置いた。

鑑定官は藁一枚を寝床と数えた。だが毎晩、火蜥蜴も岩猪も地竜も、同じ屋根の下で身を寄せて眠る。ここで暮らす者にとって、納屋全体が一つの寝床だった。

《寝床ぬくめ》

凍っていた梁から雫が落ちた。床板が人肌へ戻り、藁の奥まで柔らかな熱が広がる。老地竜が腹を床につけると、その背へ子供たちが寄り、翼を広げた夜梟が仔馬を覆った。薪は一本も燃えないのに、白い息が少しずつ消えていく。

朝、嵐が去った。竜小屋の中では、人も家畜も魔物も、重なったまま眠っていた。

オルディスは、自分の騎竜が火蜥蜴を抱えている光景を長く見つめた。それから鑑定官の灰印を剣の柄で削り落とす。

「城の暖炉は城しか温めぬ」

火竜公はネルサへ北端すべての牧地鍵を差し出した。

「だが、おまえの寝床は種族まで越えた。今日からこの地で、誰を家族と呼ぶかはおまえが決めろ」