スクリーンショットの外側

グループチャットから外された朝、私はまず画面を保存した。

通知時刻、残っている発言、メンバー数。証拠は感情より正しい。

私は昔から、電話を嫌った。言った言わないになるから、相談は必ず文字で送ってもらう。友人の千景が泣いて電話してきた夜も、切ってから「文章にして」と返した。あとで守ってあげるためだ。

送られてきた文面は日付ごとに保存し、相談した人、傷つけた人、謝った人で色分けした。三人は冗談で「伊緒裁判所」と呼んだ。私は親しみの表現だと思っていた。判決を出せる人が一人いれば、友情は迷わない。

三人のうち二人へ個別に連絡すると、どちらも同じ返事だった。

《もう切り取らないで》

意味が分からない。私はいつも、傷つけられた側の言葉をスクリーンショットにして、悪口を言った本人へ見せてきた。千景が「萌絵って時々きつい。でも好き」と書けば、「萌絵って時々きつい」までを萌絵に送る。本人同士では言いにくい本音を伝えるのが、仲裁役の務めだった。

待ち合わせの喫茶店に、三人は並んで現れた。席は私を挟まない横並びだった。注文も私に相談せず、それぞれ違う飲み物を選んだ。

千景が机へ分厚い紙束を置く。チャットの完全な書き出しだった。余白には、誰が何を受け取り、私がどこを削ったか、三色の線が引かれている。私が皆へ教えた整理方法を、私のために使ったらしい。

私が見せた画像には、謝罪の直後がなかった。

私が送った画像には、冗談だと分かる絵文字がなかった。

そして三人それぞれに、別の二人が陰口を言っているよう見せていた。

「私たち、あなたに相談してたんじゃない。あなたが作った喧嘩を、あなたに解決してもらってた」

千景は新しいチャットの画面を見せた。音声通話だけで話し合い、全員で履歴を確認したらしい。私の入る隙がないやり方だった。

三人が帰ったあと、私は紙束をめくった。

千景の最後の《もう送らないで》だけを撮り、いつもの相談フォルダに保存した。