レジ待ち臨時編成
夕方のコンビニで、レジには八人が並んでいた。
先頭は公共料金の束を持つ男性。
二番目は宅配便を三箱出す女性。
三番目は弁当を温めてもらう会社員。
最後尾には、白いエプロン姿の青年がいた。
青年が持っているのは、数字の「一〇〇」と書かれた誕生日ろうそく一つだけ。時計を見ては、靴の先を動かしている。
前の客が尋ねた。
「急いでるの?」
「六時から、勤め先の施設で百歳の誕生会なんです。ろうそくだけ買い忘れて。でも、順番なので大丈夫です」
大丈夫ではなさそうだった。
最後尾の一つ前にいた学生が横へよけた。
「僕の前へどうぞ」
青年が一つ進む。
その前の女性も言った。
「私、アイスが溶けそうだけど、一人ぶんくらいなら平気」
また一つ進む。
会社員は腕時計を見た。
「電車まで四分。でも、あなたは誕生日まで三分でしょう」
青年はさらに進んだ。
列は、駅の臨時ダイヤのように少しずつ組み替わった。
「百歳なら、私たち八人分より先輩だ」
「年功序列で先頭」
「ろうそくが遅刻したら、ケーキが九十九歳のままです」
公共料金の男性まで場所を譲り、青年はついにレジへ着いた。
会計を終えると、店員が小さな紙袋へろうそくを入れた。
「走ると転びます。早歩きで」
「はい!」
青年は全員へ頭を下げ、早歩きとは思えない速さで店を出た。
残された列は、元の順番へ戻ろうとして混乱した。
「私は何番でした?」
「アイスの人が先」
「電車四分の人も先」
「もう全員、急いでいる人からでいいでしょう」
笑いながら会計が進み、誰も大きく遅れなかった。
一週間後、青年が写真を持って店へ来た。
百歳の女性が、ケーキの上の「一〇〇」を見て、子どものように笑っている。写真の端には、施設の職員が並び、あの青年だけが汗だくのまま写っていた。裏には震える字で書かれていた。
〈みなさん、待っていてくれてありがとう。百年目にも、待ってくれる人がいました〉
店員は写真をレジ横へ飾った。
あの日、八人の待ち時間は一人につき、ほんの数十秒増えただけだった。
その数十秒を集めたら、一人の百年目の笑顔に間に合った。