七つの村を一台で回る

山羊乳の里では、朝になると七台の荷車が同じ街道へ並んだ。

七つの村が、それぞれ半分も埋まらない荷台で乳酪を市場へ運ぶ。狭い橋で順番を争い、最後の村が王都へ着くころには昼を過ぎる。昨日は百八十個が酸っぱくなり、仲買人に捨て値で買われた。

共同運送を提案した宍戸佐和へ、村長たちは一斉に首を振った。

「隣村に荷を預けられるか」

佐和は預けろとは言わなかった。翌朝、二頭立ての大荷車で最も遠い村へ現れ、鐘を一度鳴らした。村の箱には村印が押され、数も昨夜のうちに札へ書かれている。積み込みは三分で終わった。

次の村では、佐和の指定時刻に乳酪が道端へ並んでいた。荷車は止まり、積み、また走る。待ち時間はない。三つ目、四つ目、七つ目。空だった荷台が順に満ちていく。

これまで七村が使っていた馬は十四頭。今朝走ったのは二頭だけだった。

市場の鐘が二つ鳴ったとき、佐和の車は門をくぐった。いつも最も遅い谷村の乳酪を仲買人が割る。白い断面から甘い香りが立ち、酸味はない。

「二百八十個、全部朝の品だ」

前日は百八十個を売るのに日暮れまでかかった。今日は開市から半刻で完売し、空箱まで村印ごときれいに分かれていた。

市場番が到着時刻を板へ刻んだ。最遠の谷村の品は、前日より二刻と四十分早い。七台が橋で詰まっていた時間も、門で七回受けていた検査も、一台なら一度で済む。荷車税は銀貨七枚から一枚へ、御者賃は七人分から一人分へ落ちた。

仲買人は七つの村印が混ざると値を下げるつもりだったが、箱は村ごとに封じられ、売れ残りも誰の品かすぐ分かった。ところが売れ残りは零。甘い香りの乳酪が同じ朝に揃ったことで、料理屋が競りを始め、昨日の捨て値の二倍で札が止まった。

村長たちは自分の馬を畑へ戻せる日数を数え、反対していた順に共同便の札へ指印を押した。

自分の村だけ先に運べと争っていた村長たちは、空箱を村印ごと積み戻す佐和を黙って見ていた。一台の車は帰路でも七村を同じ順に回り、箱を持ち主の広場へ返していく。

王都の乳酪商が、七枚の注文札を一つに重ねた。

「毎朝二百八十個。七村巡回便ごと、うちが買う。運行責任者は佐和さん、あなたを指名する」