七日分を残す塩蔵

海辺のミルネ村では、冬の嵐より先に魚が消えた。

秋の大漁になると仲買人が来て、銀貨をちらつかせる。漁師は借金を返すため全部売り、吹雪で船が出せなくなった頃には、村に塩漬け一尾残らない。領主として赴任したクレイが見たのは、硬貨の入った箱と空の食卓だった。

「売るなと言う気か」と網元が詰め寄った。

「いいえ。売る前に、七日分だけ村へ残してください」

クレイは浜に魚形の木札を並べた。一戸につき、家族一人一日一枚。共同塩蔵から魚を受け取るたび札を箱へ入れる。漁獲税は十二尾につき一尾だけ。小魚は二尾で一尾分。誰が何尾納めたかは塩蔵の扉に刻み、領主の食卓も同じ札で受け取る。

「網を持たない家は?」と、夫を海で亡くしたマーヤが聞いた。

「塩を詰める、樽を洗う、薪を割る。どれか一刻で札を二枚。ただし病人と幼子には働きなしで配る」

漁師たちは顔を見合わせた。以前の役人は三割を持ち去り、腐らせても返さなかった。十二分の一なら、仲買人へ売る量はほとんど減らない。

最初に網元が銀鱈を一尾、台へ置いた。

「重さをごまかすなよ」

「では、あなたが量ってください」

秤の針を皆で確かめた。その日のうちに、若者は壊れた塩蔵の屋根を直し、女たちは樽底の古塩を煮直した。老人は魚の開き方を子どもへ教えた。命令書は一枚も出なかった。

その日の夕方、仲買人が「共同分まで二倍で買う」と銀貨袋を振った。去年なら皆が飛びついた額だった。

網元は塩蔵の扉に刻まれた家族の札を見た。そこには自分の孫の七枚も、マーヤの家の七枚もある。

「これは売り物じゃない。俺たちが海へ出られない日の分だ」

誰に命じられたわけでもなく、漁師たちは荷車の前へ立った。仲買人は舌打ちし、売却分だけを正規の値で買って帰った。

夕暮れ、マーヤが最初の魚へ塩を擦り込み、梁から吊るした。続いて二尾、三尾。百尾目が揺れたとき、扉の表には納めた家の名が同じ幅で並んでいた。

煙出しの穴から細い白煙が立ち、沖の雲より先に、村へ冬を越す匂いが流れ始めた。