七節の竹竿

陶延寿が守る軍旗の竿には、竹の節が七つあった。

城外の土塁に立つ標準竿は、どの軍も七節、丈二。敵の弩兵はそれを物差しにして距離を読む。昨日の三射は、旗の根元から半歩も外れなかった。

夜明け前、都尉の楽彪が鉄竿を持って来させた。

「竹は次で折れる。これなら旗は倒れぬ」

延寿は鉄竿を持ち上げ、すぐ地へ置いた。

「倒れぬ代わりに、旗持ちの肩が折れます」

「肩と軍旗のどちらが重い」

「敵には、軍旗です」

延寿は竹竿の最上段を抜いた。旗は一節ぶん低くなった。楽彪の眉が動く。

「味方まで兵が減ったと思うぞ」

「敵は高さを知っている。六節を七節と思えば、ここを実際より遠いと読む」

敵将申屠賢の弩は、二百歩を越えて鎧を抜く。ただし射角を一度決めれば、重い弩台はすぐに動かせない。遠いと誤れば矢は頭上を越える。矢が越えたのを見て前へ出れば、今度は城壁の床弩へ近づきすぎる。

「一度だけの嘘だな」と楽彪が言った。

「戦場の物差しは、二度使えばただの棒です」

延寿は六節の竿を肩へ当てた。旗布が低く垂れ、背中を叩いた。城兵の何人かは、軍旗が縮んだのを見て敗勢の印だと囁いた。延寿は聞こえないふりをした。敵だけを騙す嘘は、味方にも少し毒が回る。毒を飲まずに勝てる戦なら、旗持ちなど要らない。

薄明の野で敵兵が竿の影を測っている。弩台の歯車が軋み、角度が上がった。

第一射。黒い矢群が城壁を越え、背後の瓦を砕いた。延寿の頬に石片が刺さる。

敵陣で太鼓が二つ鳴った。弩兵が台を押し、歩兵が三十歩前進する。申屠賢は外したのではなく、距離を詰めればよいと読んだのだ。

延寿は抜いていた第七節を腰から出した。だが継ぎ口へ差すには、矢の降る胸壁の上へ立たねばならない。

楽彪が問うた。

「恐いか」

「旗が高くなる分だけ、よく見えます」

延寿は立った。一本の矢が腿を裂いた。膝をつかず、竹を継ぎ、七つ目の節を掌で打ち込む。

軍旗が本来の高さへ伸びた。城壁内の床弩手たちが、その頂を照準にした。

楽彪の右手が落ちた。

「放て」