保健室利用票_案内者欄

保健室利用票――案内者欄

【四月十日 午前十時二十五分】

利用者 一年二組・木守麻緒

症状 めまい、吐き気

案内者 二年四組・瑞籬青生

備考。

青生は、混雑する廊下を避け、旧校舎側の静かな通路を使って連れてきた。

本人は教室へ戻らず、図書室へ移動。

青生は昨年度から、人の多い教室に入れない日がある。保健室までの裏道を知っていたのは、自分が何度も使っていたため。

【四月十七日 午前九時五十分】

利用者 木守麻緒

症状 貧血

案内者 瑞籬青生

麻緒の発言。

「保健室の場所は分かります。一人で行くと、途中で怖くなるだけです」

青生、返答なし。

ただし歩調を合わせ、階段の踊り場で二回休憩したとのこと。

到着後、麻緒は青生へ飴を一つ渡そうとした。

青生は辞退。

麻緒は「では次回分」と保健室の机へ置いた。

【五月七日 午後一時十四分】

利用者 瑞籬青生

症状 過呼吸

案内者 木守麻緒

全校集会の途中、青生が体育館出口で動けなくなった。

麻緒は教師を呼ぶ前に、まず本人へ尋ねた。

「いつもの静かな道で行く?」

青生、うなずく。

保健室到着まで七分。通常経路なら二分。

遅延ではなく、必要時間と判断。

麻緒は机に残していた飴を青生へ渡した。

青生、今回は受領。

【五月二十日】

青生、昼休みに来室。

体調不良なし。

「案内しただけなのに、どうしてあの子は僕を助けたんでしょう」

養護教諭回答。

「あなたが場所を教えたからではなく、一人にしなかったからでは」

青生、長時間沈黙。

その後、校内図の裏へ、静かな通路、休める椅子、水飲み場を書き込んだ。

題名は〈急がなくていい道〉

【六月三日】

麻緒、教室で気分不良。

青生が案内。

今回は旧校舎側ではなく、中央廊下を選択。

二人で人の多い道をゆっくり歩いた。

途中、麻緒が青生へ「大丈夫?」と三回確認。

青生も同じ回数、麻緒へ確認。

【六月二十四日】

利用者 一年生男子。腹痛。

案内者 木守麻緒、瑞籬青生。

二人は〈急がなくていい道〉を見せ、本人に経路を選ばせた。

三人で到着。

案内者二名、利用者一名として記録したが、本人より「三人とも少し安心した」と申告あり。

【七月十九日 終業式】

利用者なし。

案内者欄の名称について、生徒二名から変更提案あり。

旧――案内者

新――同行者

理由。

「どちらが助ける側か、途中で入れ替わるため」

次学期より採用。

保健室の場所は、校内図にも書いてある。

けれど具合の悪い日に本当に必要なのは、曲がり角の数ではない。

そこまで一緒に歩いてくれる人である。