充電台の四番

証拠管理室の充電台には、八台のボディーカメラが並んでいた。

四番だけ、妙に新しい。

早乙女千紘巡査部長は、機器番号を台帳と見比べた。昨夜の薬物捜索で使われた四号機は、容疑者を追って川へ入った際に流失したことになっている。映像も未回収。容疑者は「捜索前に警察官が白い袋を台所へ置いた」と訴えたが、裏づける映像はない。

「それは訓練用です」

背後で蓬田巡査が言った。顔色が悪かった。

「四号機は?」

「川です」

「なら、午前三時十二分に四番の台へ接続された機器は何」

千紘が印刷した充電履歴を置くと、蓬田は唇を噛んだ。台は接続されたカメラの固有番号と残量を自動記録する。午前三時十二分、流失したはずの四号機が残量六十一パーセントで帰署していた。午前三時十九分に外され、その七分後、訓練用機が同じ場所へ差し込まれている。

「誰が外したの」

「見てません」

「あなたの入室記録がある」

「鍵を貸しました」

「誰に」

扉の外で靴音が止まった。奈良坂刑事課長だった。昨夜の捜索を指揮し、令状請求の誤りを隠すためにも、薬物の発見を必要としていた男だ。

蓬田は小声で言った。

「課長は、映像を確認するだけだと。俺は台から抜いて渡した。返ってきたのは、今あるやつです」

奈良坂が入室した。

「若いのを脅すな。履歴は試験接続だ。流失報告を確定して、台帳を閉じろ」

「試験なら、四号機の固有番号は記録されません」

「数字はいくらでも誤る。組織は一人の係員の思いつきで動かない」

千紘は訓練用機を台から抜いた。背面のねじに、昨日までなかった工具傷がある。中身だけを入れ替えようとした跡だった。

奈良坂は、千紘の昇任試験の推薦者でもあった。その声が急に穏やかになる。

「ここで終わらせれば、誰も傷つかない」

千紘は空いた四番の差込口へ、証拠保全の赤い封印テープを貼った。充電台そのものを動かせない証拠品にするためだった。

そして台帳の「流失」の二文字を横線で消し、訂正印を押した。