十六パーセントの大部屋

弓削は、三つの扉が開くより早く、いちばん右の部屋へ飛び込んだ。

正面表示は《酸素濃度16%》。九鬼は鼻で笑って中央の《18%》へ、有馬は迷わず左の《20%》へ入る。

透明な隔壁が降り、三人を別々の箱へ閉じ込めた。

《六十秒後、選んだ室内に残る酸素の量が最も多い者だけを解放する》

それが、このラウンドの規則だった。

「悪いな、弓削」

左室の有馬がガラス越しに二本指を立てる。

「数字が読めない奴から死ぬゲームらしい」

弓削の部屋は、壁際まで三歩ある。天井も高い。対して有馬の部屋は電話ボックスほどしかなく、九鬼の部屋はその中間だった。だが二人は、赤く光る百分率から目を離さない。

残り十秒。三室の送風口が閉じた。各表示は、呼吸の分だけわずかに下がる。

判定音が鳴った。

《右室、酸素量四百七十六リットル。中央室、三百五十六リットル。左室、百九十八リットル》

有馬の笑みが凍った。

「待て。二十が、十六に負けるはずがない」

「二十『パーセント』ならな」

弓削は両腕を広げた。右室の容積は三千リットル、中央は二千、左は千。濃度が低くても、箱そのものが三倍なら、含まれる酸素の総量は多い。

「規則は濃度が高い者とは言っていない。量が多い者だ」

主催者は数字を目立たせ、部屋の大きさをただの舞台装置に見せたかったのだ。人は比較しやすい数字を与えられると、単位を忘れる。

右室だけで解錠音が響いた。

床の白線は一メートル間隔、天井梁にも容積を示す目盛りが刻まれていた。有馬は百分率しか見ず、その目盛りを演出だと切り捨てた。九鬼が指で空中に掛け算をすると、どの数字も判定結果と一致する。正解は最後に明かされたのではなく、入室前から三人の足元に広がっていた。

入口上の室番号も、右から《三千》《二千》《千》を図案化した形だった。数字は二種類、最初から並んでいた。

弓削は十六という赤い数字の下をくぐり、白く開いた出口へ歩いた。