双子比較表_記入禁止
双子比較表、記入禁止
私たち双子には、親戚公認の比較表がある。
〈姉――几帳面、理系、我慢強い〉
〈妹――大ざっぱ、文系、愛想がいい〉
法事でも正月でも、大人たちは表を更新した。
「お姉ちゃんは就職も堅実」
「妹ちゃんは結婚が早そう」
「姉は料理できないでしょう」
「妹は貯金できなさそう」
最初は笑っていた。
けれど姉が一人暮らしを始める日、妹は言った。
「失敗したら、私の役まで取らないでね」
姉は怒った。
「そっちは何しても『自由だから』で済んでいいよね」
それから半年、連絡を取らなかった。
祖母の米寿祝いで再会すると、席札の裏に比較表が印刷されていた。伯母の力作らしい。
「これ、今日で終わりにしない?」
妹が言った。
二人は席札を交換した。
几帳面な姉として紹介された妹は、祝いの進行表を完璧に管理した。実はイベント会社勤務で、予定を組むのが得意だった。
愛想のいい妹として紹介された姉は、乾杯の挨拶で言葉に詰まった。人前が苦手なのを、家族の前では隠してきた。
親戚は途中まで入れ替わりに気づかなかった。
「双子なのに分からないの?」
祖母が笑うと、伯母は困った。
「だって、性格で見分けてたから」
「その性格が間違ってたんでしょう」
姉は席札を元へ戻した。
「私は理系だけど、片づけは苦手。貯金もしてない」
「私は文系だけど、料理は嫌い。結婚の予定もない」
妹が続けた。
「姉の失敗は、私の担当じゃない」
「妹の愛想も、家族サービスじゃない」
二人は半年間言えなかったことまで話した。
姉は、いつも正しい役を背負うのが苦しかった。
妹は、真剣な話をしても冗談だと思われるのが嫌だった。
互いに、相手は楽な役だと思っていた。
祖母が比較表を半分に破った。
「二人とも面倒くさい。そこは似てるね」
全員が笑い、双子だけは少し遅れて笑った。
祝いのケーキには、急きょチョコの札が追加された。
〈比較禁止。本人へ確認〉
姉妹は別々の味のケーキを選んだ。
双子であることは同じでも、同じ物差しの左右へ置かれる必要はなかった。