善意のスクリーンショット

晴香が匿名アカウントに狙われたと知った夜、私は証拠係を買って出た。

「本人は見ないほうがいい。全部、私が保存するから」

私は届いた中傷をスクリーンショットにし、日付ごとに並べた。晴香の心を守るため、相手の名前と時刻は切り落とした。晴香も「そこ、もう少し上まで切って」と、泣きながら細かく指示した。

匿名の「青い硝子」は、晴香を嘘つき、盗人、疫病神と呼んだ。晴香は通知が鳴る直前だけ、不思議とスマホを伏せた。そして投稿が表示されると、私の顔を確かめてから涙をこぼした。

私は許せなかった。まとめ画像を作り、〈親友が半年間も被害に遭っています〉と拡散した。相手の勤務先を特定した人が現れ、抗議電話が殺到した。晴香は「やめてあげて」と言った。その一言まで優しくて、私はもっと怒った。

拡散数が一万を越えたとき、晴香は泣き顔のまま何度も更新ボタンを押した。知らない人の「かわいそう」が増えるたび、呼吸が落ち着いていくように見えた。私は、それを安心の表情だと信じた。

数日後、「青い硝子」から私に未加工の画像が届いた。

切り落としていた上部には、晴香の名前があった。

〈まだ生きてるの?〉

〈会社にも送ってあげようか〉

〈友達がいない理由、教えてあげる〉

その下に、相手の〈もうやめて〉が続き、さらに下の一文だけを、晴香は私へ「中傷」として渡していた。

私は晴香の部屋へ向かった。彼女は驚かなかった。

「昔から大げさなの、あの子。私のことだけ悪者にするから」

「でも、最初に送ったのは晴香だよね」

「佳澄は、どっちの味方なの?」

その問いで胸が縮んだ。私は親友を守るために始めたのだ。ここで疑えば、相手の思うつぼになる。

晴香は新しい画像を差し出した。

「これもお願い。下の二行だけ使って。上は誤解されるから」

私は受け取った。晴香は私が切り抜く位置を指で囲み、その手つきだけは少しも震えていなかった。画面には、まだ送信されていないメッセージの入力欄が開いていた。

そこには「お前が消えれば、全部被害者になれるのに」と三度書かれていた。