宅配ボックスは明日開ける
土曜の午後四時五十八分、諏訪みどりは枕元で三件の不在通知を見つけた。
一件目は十一時七分、二件目は十三時二十二分、三件目は十五時四十分。三度目で荷物は宅配ボックスに入れられていた。通知の末尾にある〈再配達の手間が省けました〉という文が、なぜか自分への皮肉に見えた。
荷物の中身は、クローゼット用の収納ケースだった。今日こそ冬物を畳み、床に積んだ紙袋を捨て、空いた棚に仕事用の鞄を入れるつもりで注文した。午前中に届くまで少し横になろうと思ったところまでは覚えている。
部屋は寝る前と同じだった。いや、睡眠のぶんだけ悪くなっていた。飲みかけの水はぬるく、毛布は床までずり落ち、メイクを落としたコットンがごみ箱の縁に乗っている。スマートフォンには、友人から〈今日なにしてる?〉という未読もあった。
みどりは「片づけ」と打ちかけて消した。今から始めれば、まだ土曜を無駄にしなかったことにできる。そう思って立ち上がったが、床の紙袋を一つまたいだだけで、膝の裏が頼りなくなった。
部屋着の上にコートを羽織り、髪を手で押さえて一階へ下りた。宅配ボックスから出した段ボールは思ったより大きく、角が太ももに当たった。エレベーターの鏡には、眠った跡のついた頬が映っていた。
部屋へ戻り、段ボールを玄関の壁に立てかける。開封用のはさみまで持ってきたのに、テープへ刃を入れる気になれなかった。
冷蔵庫のヨーグルトをそのまま食べ、レシートや輪ゴムの入った小皿だけを棚へ戻した。片づいたのは手のひら二枚ぶんの場所だった。
収納ケースは、片づけるために届いたものだ。けれど届いた日に片づけなくても、役目を失うわけではない。みどりは段ボールに「明日」と付箋を貼り、もう一度ベッドへ座った。
友人への返信は、〈家にいるよ〉だけにした。何をしていたかまでは書かない。すぐに〈じゃあ夜ごはんどう?〉と来たら困ると思ったが、送信後も画面は静かだった。人に会えないほど疲れていることと、一人で眠ったことは、同じ説明の中へ無理に収めなくてもよかった。
今日は受け取った。それだけで配達は完了している。