家族グループ名_タービン危篤

家族グループ名――タービン危篤

【午前六時十二分 父】

〈タービンが死んだかもしれない〉

【六時十三分 長女】

〈触った?〉

【六時十三分 父】

〈冷たい。動かない〉

【六時十四分 次男】

〈今行く〉

【六時十五分 末娘】

〈私も。病院に電話して〉

三人きょうだいが閑田景舟の家へ集まったのは、母の三回忌以来だった。

食卓の上には、毛布に包まれたフェレットのタービン。長女は泣きながら名前を呼び、次男は動物病院への道を検索し、末娘は父に「なぜもっと早く連絡しないの」と怒鳴った。

そのとき毛布が動いた。

タービンは大あくびをし、長女の手から車の鍵を奪って、ソファの下へ消えた。

深く眠っていただけだった。

三人は安堵し、同時に父を責めた。

【七時二分 長女】

〈紛らわしい連絡をしない〉

【七時二分 父】

〈本当に死んだと思った〉

【七時三分 次男】

〈体温を確認。呼吸を見る。分からなければ病院〉

【七時三分 末娘】

〈これ、同じ部屋でチャットする必要ある?〉

鍵を探すため、全員でソファを動かした。下から出てきたのは鍵だけではなかった。

長女が小学生のころ失くした髪留め。

次男の少年野球のメダル。

末娘が母へ渡せなかった〈ごめんなさい〉のメモ。

そして父の病院の予約票。

診療科は循環器内科。予約日は三か月前だった。

「行かなかったの?」

父は目をそらした。

「大したことじゃない。胸が少し苦しくなるだけだ」

三人の怒りが、今度は別の形で爆発した。父は「おまえたちも忙しい」と繰り返した。

長女が言った。

「タービンのことで全員呼べたなら、自分のことでも呼んでよ」

父はしばらく黙り、ソファの下へ手を伸ばした。タービンは鍵を渡さず、父の袖へ潜り込んだ。

【七時二十分 父】

〈分かった〉

【七時二十分 末娘】

〈口で言って〉

「分かった」

その日のうちに長女が病院を取り直し、次男が送迎表を作り、末娘がグループ名を変更した。

【新しいグループ名】

〈全員、生存確認〉

以来、毎朝だれかが一言送る。

〈起きた〉

〈仕事行く〉

〈薬飲んだ〉

〈タービン、靴下返せ〉

タービンは何も返信しない。

ただ家族が散らばりそうになるたび、必要なものを一つ盗み、同じ場所へ集めている。