星一つの木匙で千人を満たす

城門が閉じて七日目、避難民の鍋に残っていたのは豆が三粒と、濁った湯だけだった。

炊き出し係のボルクは、空腹で泣く子どもを見ないように薪を足した。兵糧庫は敵の火矢で焼け、商人は門の外。今夜を越せる食事は、どう数えても二十人分しかない。広場には九百人が並んでいた。

昼に倒した鼠王が落とした宝箱を、彼は一度だけ開けている。中に入っていたのは、先の欠けた木匙だった。

【★1:底さらいの匙】

【鍋の底に食べ物を残しません】

勇者は外れだと言い、剣を研ぎに戻った。だがボルクは、その説明を何度も読み返した。「残さない」とは、誰が残さないのか。

彼は木匙で鍋を一周だけかき混ぜた。

さらり、と湯の音が変わった。薄い豆の匂いに、炒めた玉ねぎと乳の甘さが重なる。鍋底から湯気が立ち上り、灰色だった汁が琥珀色になった。

最初の椀を子どもへ渡す。次を老女へ。すくっても、すくっても、水面の高さは変わらない。ただし二杯目を求めた兵士の前では、匙がぴたりと止まった。

「まだ食べていない人がいる」

ボルクが言うと、兵士は赤くなって列の最後へ下がった。

木匙は、腹を満たしていない者の分だけを鍋底から見つけ出した。九百人目の少女が最後の一口を飲み込んだとき、鍋にはきっちり一椀分が残った。

列の途中で鍋へ近づいた貴族が、金貨を積んで先に盛れと命じた。木匙は鉛のように重くなり、彼の手では一寸も動かなかった。代わりに、列の外で遠慮していた妊婦へ向けると羽根ほど軽くなる。

誰も押し合わなくなった。自分の番が必ず来ると、湯気の匂いが証明していたからだ。

門を守る兵も兜を脱ぎ、子どもの後ろへ並び直した。誰の椀にも、身分を示す印はなかった。

ボルクはそれを自分の椀へ移した。七日ぶりの温かさが、舌から腹へ落ちていく。広場には泣き声ではなく、木の椀を重ねる乾いた音が広がった。

欠けていた匙の先が、金色に光る。

【隠し条件「最後に自分を食べさせる」を達成】

【最高希少度SSR《飢えを置き去りにする豊穣匙》――大陸初取得】