欠席者は右上に

 折笠敬介は、母校の創立百周年記念誌を作るため、歴代の卒業写真をデジタル化していた。

 昔の集合写真では、撮影日に休んだ生徒を右上の小さな丸枠へ合成している。

 昭和の写真には、一人か二人の顔がそこへ収まっていた。

 作業中、敬介は妙な規則性に気づいた。

 昭和四十八年度の写真で右上にいる男子は、名簿では出席になっている。翌月、川で溺れて亡くなっていた。

 昭和六十二年度の女子も撮影日に登校していたが、卒業式の前日に交通事故で亡くなった。

 平成十三年度の教諭は、写真撮影の二週間後に校舎の屋上から落ちている。

 右上に入るのは、撮影日に欠席した者ではない。

 卒業式までに、この学校からいなくなる者だった。しかも丸枠の顔は、どれも正面を向かず、中央の列を見つめていた。

 敬介自身の卒業写真も調べた。

 右上には同級生の顔があった。彼は撮影日には敬介の隣に立っていたはずだが、夏休み中に行方不明になっている。写真の中央を拡大すると、その場所だけ不自然に詰められ、最初から誰もいなかったように修整されていた。

 記念誌には載せられないと思い、校長へ報告した。

 校長は写真を一目見るなり、右上を紙で隠した。

「古い印刷所の癖でしょう。余計なことは書かないでください」

 その年の六年生は、翌日に卒業写真を撮る予定だった。

 敬介は立ち会い、欠席者が一人もいないことを確認した。児童三十二人、担任、校長、記念誌担当の敬介。全員が校庭の雛壇へ並んだ。

 一週間後、印刷所から校正刷りが届いた。

 児童も教職員も、全員中央に写っている。

 右上には、敬介の顔だけが小さな丸枠で載っていた。

 撮影中、彼は校長の隣に立っていたはずだ。

 しかし中央のその場所には、誰もいない。

 敬介は印刷所へ電話した。

「私は欠席していません。なぜ右上に入れたんですか」

 担当者はしばらく黙り、困った声で答えた。

『欠席者のお名前は、学校からいただいた原稿どおりです』

「原稿には、何と?」

『折笠敬介先生。欠席予定日、三月十九日――卒業式当日、とあります』