止まらない一番シュート
一番シュートの警告灯が点いたのは、午前一時十二分だった。
通販倉庫のソーターは、箱を行き先ごとに滑り台へ落とす。警告灯が点けば、普通は荷物を抜いて再起動する。久慈野真琴が駆けつけたとき、若い作業員はすでに腕を差し入れようとしていた。
「触らないで。停止ボタンだけじゃ、ベルトは完全には死んでない」
真琴は主電源を落とし、鍵を抜いた。ロックアウトを確認してから、詰まった箱を一つずつ外す。ところが奥に障害物はない。再起動すると、十秒後にまた一番だけが満杯になった。
「センサー故障ですね」と保全員が言う。
真琴は流れてくる荷物を見た。どの箱にも同じ赤い丸印があり、本来は七番シュートへ落ちる翌日便だった。一番は当日便で、運転手が待っている。機械は止まっていない。むしろ正確に、誤った指示へ従っていた。
彼女は赤丸の箱を一つ持ち上げ、底のラベルを見た。新しい送り状の下から古いバーコードが半分のぞいている。返品箱を再利用した際、剥離が甘かったのだ。読取機は上面の新ラベルではなく、底面の古いコードを拾っていた。
「全部止めて貼り直す時間はない」
班長が顔をしかめる。真琴はソーターの速度を半分に落とし、読取機の手前に二人を立たせた。赤丸だけを抜き、底の古いラベルを黒いテープで塞いで戻す。七番へ流れたことを確認してから次を入れる。速さを取り戻すのではなく、誤読させない手順に変えた。
途中、班長が「もう大丈夫だろう」と速度を戻そうとした。真琴は一番に落ちた小箱を指した。赤丸が薄く、見逃された一個だった。
「今戻せば、また詰まります。詰まるだけならいい。誰かが焦って手を入れます」
その言葉で、班長は操作盤から手を離した。
午前三時、最後の赤丸が七番へ滑った。待っていたトラックの扉が閉まり、警告灯は消えた。作業員が拍手しそうになった瞬間、館内端末に新しい数字が並ぶ。
大型セール第二波、二万四千点。
ソーターが低く唸り、真琴は鍵をポケットから出した。今度は止めるためではなく、次を動かすためだった。