水が決めた王宮の高さ
王宮の新しい回廊は、完成寸前で止まっていた。東塔と西塔から伸ばした梁が、中央で拳一つぶん食い違ったのだ。
測量長は霧のせいだと言い張った。高価な照準器でも、百歩先の印が見えなければ高さを移せない。やり直しには石材三百枚と二か月。責任を押しつけられた見習いのセスカは、その日のうちに解雇されるはずだった。
前世で設備工だった彼女は、厨房から透明な羊腸の管を借り、色を付けた水を満たした。
「両端の水面は、離れていても同じ高さになります」
説明はそれだけだった。
一方の端を東塔の基準線に合わせ、もう一方を西塔へ運ぶ。管は階段を下り、壁の穴をくぐり、霧の中を百二十歩進んだ。それでも水面は西塔の石柱に、一本の高さを示した。
測量長が引いた線との差は、ちょうど拳一つ。
「管が嘘をついている!」
彼は叫んだが、セスカは四か所で測り直した。差はすべて同じだった。
石工たちは西側の受け石を削り、梁を持ち上げた。夕方、二本の梁は中央で音もなく噛み合った。上に銀貨を置いても、東にも西にも転がらない。作業にかかったのは四十分、捨てた石はゼロだった。
国王は完成した回廊を歩き、中央で立ち止まった。
「霧の日でも測れるのか」
「水が凍らない限りは」
失敗が公になれば、測量長は見習い一人に罪を着せるつもりだった。すでに解雇状にはセスカの名が書かれている。彼女はそれを見ても抗議せず、管の中に気泡がないことだけを確かめた。
疑う大臣のため、赤い水を抜いて青い水でも測った。さらに管の両端を入れ替える。示した線は三回とも同じで、誤差は爪の厚さより小さい。石工がその線に沿って受け石を削ると、二百人で持ち上げていた梁が、最後の一押しで乾いた音を立てて収まった。霧はまだ回廊を覆っていたが、もはや誰も空を見る必要はなかった。
国王は測量長の金鎖を外し、セスカの首に掛けた。
「北方城塞までの水路工事が滞っている。今日から王室測量官として、全区間の高さを決めよ」