空から来た侵略者

 植民惑星ラウネでは、収穫期になると〈灰翼〉が襲ってきた。

 彼らは夜の果樹園へ降り、青白く光る実をもぎ、倉庫の殻箱を奪っていく。開拓民はその実を炉で砕き、酸素と電力を得ていた。灰翼のせいで冬を越せない家が出た、と総督は繰り返した。

 私は警備隊員として、彼らを撃った。

 奇妙な敵だった。銃を持たず、樹脂の糸で人の足だけを絡め、箱を抱えて逃げる。最初の襲撃で死んだ三人も、爪で裂かれたと教えられていた。

 十四度目の夜、一体を追って渓谷へ入った。

 傷ついた灰翼は、奪った殻箱を胸に抱えていた。私が銃を向けると、翻訳機が掠れた声を拾った。

『返して』

「これは私たちの収穫物だ」

『返して。まだ眠っている』

 岩陰には、奪われた殻箱が何百個も並んでいた。灰翼は一つを温かな泥へ埋め、膜をそっと剥がした。

 青い実が割れた。

 中から、透き通った小さな翼が伸びた。

 果実ではなかった。樹木に産みつけられ、光を蓄えながら育つ、彼らの子だった。

 翻訳機の記録を遡ると、襲撃のたびに繰り返された鳴き声は、威嚇でも勝利の叫びでもなかった。

『子を返せ』

『燃やさないで』

『眠りを砕かないで』

 総督府はその翻訳を、すべて「意味不明の戦闘音声」として封印していた。最初の襲撃で死んだ三人の検視記録も見つけた。死因は爪ではなく、警備塔の弾丸。灰翼を狙った自動射撃によるものだった。

 彼らは一人も殺していない。

 殺していたのは、冬を越すためと言いながら、他者の子を炉へくべてきた私たちだった。

 夜明け前、私は倉庫の扉を開けた。何万もの殻箱を抱え、灰翼たちが黙って空へ戻っていく。

 総督は通信機越しに叫んだ。

『侵略者に加担する気か!』

 私は、開拓船が降りた日の古い映像を見た。

 空から巨大な炎を吐き、森を焼き払って現れたものが映っている。

「侵略者は、最初から一種類しかいませんでした」

 灰翼には翼があった。

 けれど、この星へ空から来たのは、人間のほうだった。