竜王の怒りにも弱点がある
北門の上で、弱点鑑定士ドランは笑いものになっていた。
空を覆う赤竜王へ向け、百人の魔術師が氷槍を撃ち込んでも、鱗一枚割れない。将軍はドランの襟をつかんだ。
「弱点を探すのがお前の仕事だろう!」
【鑑定:指定した対象の最も脆い一点を表示する】
ドランはすでに竜王の角、翼、心臓、逆鱗まで見た。表示はすべて「突破不能」。だから将軍は、彼を役立たずと呼んだ。
竜王が息を吸う。次の炎で城壁ごと王都が消える。
その咆哮には、怒りだけではない。何かを探すような響きがあった。
ドランはふと気づいた。対象とは、肉体でなければならないと誰が決めた。
彼は迫る炎ではなく、王都を焼こうとする竜王の「怒り」へ鑑定を向けた。
脳裏に現れた答えは、たった一行だった。
弱点――返されていない卵。
「第三王子の戦利品庫を開けろ!」
将軍が拒む。だがドランは衛兵の槍を奪い、倉庫の錠を叩き割った。奥には宝石を貼り付けられた巨大な卵があり、第三王子が祝宴の見世物にしようとしていた。
「ただの魔獣の卵だ! 国の威信のために奪った!」
「それが王都を焼く理由です」
ドランは卵を荷車に載せ、門外へ押し出した。竜王の炎が降る直前、殻の中から小さな鳴き声がする。
炎は空中でほどけた。
赤竜王は卵を抱き上げ、王子だけを黄金の瞳で見た。王子は膝から崩れた。騎士たちも、今度は誰に剣を向けるべきか理解していた。
竜王は王都を焼かずに飛び去り、代わりに王子の戦利品庫だけを尾で粉砕した。
将軍が青ざめて頭を下げる。
「竜の弱点を見つけたのか」
「いいえ。怒りの弱点です」
第三王子は狩人へ罪を押しつけようとしたが、卵を包んでいた王家の旗と、殻に残る彼の短剣の傷が何より雄弁だった。竜王は飛び立つ前、ドランの足元へ一枚の赤い鱗を落とす。それは攻撃を防ぐ逆鱗ではなく、竜族が恩人に渡す通行証だった。城壁の兵たちは王子ではなく、三流と呼ばれた鑑定士へ槍を掲げた。
ドランの職業欄が、竜の咆哮に応えるように書き換わった。
【職業:弱点鑑定士 → 竜意看破士】