終了音のあとで
洗濯機の終了音が鳴ったのは、日付が変わる十二分前だった。
私はベッドの上で、その電子音を三回聞いた気がした。一回しか鳴らない設定なのに、頭の中で「終わりました」が反響していた。洗濯物を干し、乾いたら取り込み、畳み、引き出しに戻す。洗濯はボタンを押してからが長い。
実家にいたころ、洗った服はいつの間にか箪笥へ戻っていた。一人暮らしを始めて六年になるのに、家事には終点がないことへ、ときどき今さら驚く。食器も床も郵便物も、こちらが疲れている事情を知らず、次の動作を待っている。
明日の午前は取引先との打ち合わせがある。白いブラウスを着るつもりで、それだけは洗濯ネットに入れた。ほかはタオルと下着と部屋着。どれも生活を続けるための布なのに、濡れた瞬間から宿題になる。
立ち上がると、足の裏にフローリングの冷たさが触れた。洗面所の扉を開ける。洗濯槽から、洗剤と湿気の混ざった匂いがした。
私は全部をかごに移し、物干し竿の前でしばらく止まった。ハンガーは五本しか空いていない。いつもなら乾いている服を外し、それを畳んでから新しい服を干す。順番を守らないと、部屋が負けたように散らかる。
その夜は、白いブラウスだけを丁寧に伸ばしてハンガーにかけた。タオルは二枚、椅子の背に広げた。下着と部屋着は、かごの縁に重ならないよう引っかけた。見栄えは悪い。雑誌の一人暮らし特集には載らない干し方だった。
椅子は座るため、かごは運ぶため、と決めたのは誰だろう。今夜の椅子は物干しで、かごは引き出しだった。用途を間違えているのではなく、私の部屋でだけ通用する臨時の役職を与えたのだと思うことにした。
それでも、濡れたものは濡れたままではなくなった。
乾燥した靴下の山がベッドの端に残っていた。私はそれを畳まず、足元の空いたかごへ移した。明日の朝、そこから一足探せばいい。
スマートフォンの目覚ましを七時十分に合わせる。洗濯機の表示は暗くなり、部屋には冷蔵庫の低い音だけが残った。
家事は、全部終わらせなくても途中で眠っていい。そう口に出す代わりに、私は白いブラウスの一番上のボタンだけ留め、電気を消した。