老いゆく告発
処刑台の脇には、《真実の砂時計》が置かれていた。
教会法廷で真実を告発した者は、一件につき一年老いる。神は軽々しい糾弾を嫌うのだ、と主教ラウグは説いてきた。そのため彼を訴えた者は、皆、最初の数件で口を閉ざした。
十九歳の書記ケスティンは、首縄を掛けられた薬師の前へ進んだ。
「第一の告発。主教は施療院の薬を抜き、富商へ売った」
砂が一粒落ちた。鐘が澄んだ音を返す。真実だ。
ケスティンの頬から少年の丸みが消えた。
「第二。空になった瓶へ色水を詰め、貧民へ配った」
目尻に皺が刻まれる。
ラウグは笑った。「命を無駄にするな。薬師一人のために何年捨てる気だ」
「第三。死者数を書き換えた」
「第四。告発した修道女を異端牢へ送った」
「第五。その牢へ火を放った」
一件ごとに、声が低くなった。指の節が太くなり、黒かった髪へ霜が降りる。薬師は縄の下で首を振り続けた。もう十分だ、と唇だけが動く。
だが、ケスティンは帳面を閉じなかった。
二十件目で腰が曲がった。三十件目で片目が濁った。四十件目、法廷を囲む群衆から、主教へ石を投げる者が出た。近衛兵は命令を待ちながらも、砂時計から目を逸らせない。告発のたび、真実の鐘が鳴っている。
ラウグは壇上から降り、帳面を奪おうとした。
ケスティンは老人の手でそれを胸へ抱いた。
「第四十七。主教は今日、この薬師を処刑し、すべての罪を着せるつもりだった」
鐘が鳴った。
刑吏が縄を切る。
「第四十八」
ケスティンは、もう歯の半分を失った口で言った。
「この砂時計の術を作った神官を、主教は口封じに殺した」
最後の砂が落ちる。ラウグの顔から血の気が引いた。近衛兵が彼の腕を取った。
薬師は処刑台を降り、膝をついてケスティンを支えた。
「なぜ、そこまで」
老人になった書記は答えようとした。昨日まで、薬師は彼の兄だった。幼いころ同じ寝台で眠り、同じ匙で粥を食べた。その記憶は残っている。
けれど、皺だらけの喉から出た声を、兄は父の声と聞き違えた。
ケスティンは砂時計の銀面を見た。そこには十九歳の告発者ではなく、六十七歳の見知らぬ男が映っていた。
主教を裁くために費やした四十八年は、比喩ではなかった。彼の身体だけが、誰より先に判決の翌日へ着いていた。