胸の中の避難鐘

葬列が広場へ入ったとき、封じたはずの鐘がひとりでに鳴った。

一度目の音で、棺の蓋が内側から持ち上がる。二度目で、墓地の土が波打った。七度鳴れば、村で死んだ者すべてが帰り、生者の口から名前を奪う。

鐘楼の下にいたミオラは、喉の裂け目を開いた。頬まで割れた口の奥は空洞で、そこへ呪われた音を呑み込める。ただし一音呑むたび、身体の臓器が一つ、青銅へ変わる。

「三度までだ」

墓守のペクが彼女の腕をつかんだ。

ミオラの腹には、すでに古い鐘の色をした肝臓が沈んでいる。去年、産婆たちを亡霊から守った代償だった。

三度目が鳴る。

彼女は音へ噛みついた。広場を震わせるはずの響きが細い糸になり、裂けた口へ吸い込まれる。腹の奥で冷たい重みが増し、片方の肺が金属になった。呼吸が半分になる。

四度目。棺から死者の指が覗く。

ミオラはまた呑んだ。胃が鐘になる。もう空腹を感じない。

五度目。墓地の門から、泥をかぶった幼子たちが歩いてくる。見物人は悲鳴を上げたが、逃げれば死者に背を向け、名前を抜かれる。

ペクが鐘楼へ走ろうとした。だが階段には黒衣の司祭が立ち、鐘綱を両手で引いている。疫病で失った信者を戻し、もう一度献金させるつもりなのだ。

六度目を、ミオラは膝をついたまま呑んだ。

右の肺まで青銅へ変わった。息が止まる。それでも彼女は倒れなかった。異形の身体は、心臓さえ動けば立っていられる。

ペクが司祭を引きずり落とした瞬間、男の手から綱が滑った。

最後の鐘が鳴った。

音は村全体を覆い、棺という棺が開き始めた。ミオラは胸骨を左右へ開き、最後の響きを直接、心臓へ迎え入れた。

死者たちは一斉に止まり、乾いた土へ崩れた。

夜明けの広場で、生き残った者たちは互いの名を呼び合った。誰の口からも名前は失われていない。

ペクはミオラを抱き起こそうとした。胸へ触れた指先に、脈はなかった。

代わりに、青銅の内側から小さな音が返った。

からん。

からん。

彼女の眼は開いていたが、もう瞬きをしない。ペクが名を呼ぶたび、胸の奥の避難鐘だけが、遠い村人へ道を知らせるように鳴った。