追悼設定を解除できません

【SNSサポートへの問い合わせ】

申請内容:

 娘のアカウントを追悼設定にしてください。

 半年前、海へ身を投げました。遺体は見つかっていませんが、警察も生存は難しいと言っています。

【サポート】

 追悼設定には公的な死亡証明が必要です。

 また、対象アカウントは現在も継続的に利用されています。

【申請者】

 誰かが乗っ取っています。

 昨日から、こんな投稿をしています。

〈六十一日目〉

〈暗くて昼か夜か分からない〉

〈お母さん、水をください〉

 写真は黒い壁と配管だけです。娘が書くはずがありません。すぐ削除してください。

【サポート】

 不正アクセスの形跡はありません。

 投稿には、登録済み端末による顔認証と音声認証が使用されています。

【申請者】

 端末は娘と一緒に海へ落ちたはずです。

【サポート】

 使用端末名は「居間用タブレット」です。

 接続先は、申請者様のご自宅のWi-Fiです。

【申請者】

 そのタブレットは壊れています。

 娘の古い映像を使った偽物です。

【サポート】

 本日投稿された動画では、利用者が現在時刻を読み上げ、こちらから表示したランダムな数字へ応答しています。生体反応も確認されました。

 動画の背景から、換気設備のない閉鎖空間にいる可能性があります。緊急性が高いため、警察への連絡をご検討ください。

【申請者】

 警察には連絡しないでください。

 家庭の事情です。

【サポート】

 対象者から、当社の安全機能を通じて救助要請が送信されました。

 端末の位置情報は、申請者様の登録住所と一致しています。

【申請者】

 そんなはずはありません。

 地下室には電波が届かないようにしてあります。

【サポート】

 地下室について、これまでのやり取りではお知らせいただいていません。

【申請者】

 今の文章は間違いです。忘れてください。

 娘は海で死にました。アカウントを消してください。

【サポート】

 ご要望には対応できません。

 なお、位置情報と本記録は警察へ提供しました。

【申請者】

 この住所へ来ても無駄です。

 地下室があるのは、ここではありません。

【サポート】

 その所在地をお知らせください。

【申請者】

 送信を取り消しました。

【システム】

 安全に関する問い合わせでは、送信済み内容を取り消すことはできません。

 対象アカウントが新しい投稿を公開しました。

〈お母さん、やっと誰かに読んでもらえた〉