雨を逃がす三本の溝

王都菜園の青菜は、雨が降るたび根から腐った。

 宮廷は毎朝三百束を求めるのに、今週納められたのは四十七束。菜園長は土の呪いだと言い、浄化石を買うため小作人の給金を半分にした。

 転移者の鉄見弦志だけが、畑の中央に水が光っているのを見ていた。

「石を買う前に、雨の出口を作らせてください」

「土を掘れば野菜が増えるのか?」

 菜園長ボルクは、失敗すれば弦志を追放する条件で、最も低い一画を与えた。

 弦志は青菜を平らな地面へ植えなかった。土を膝下まで盛って長い畝を作り、畝と畝の間に三本の溝を通す。中央の溝を一番深くし、菜園外の排水路へつないだ。

 周囲は「根を雨に近づける愚か者」と笑った。弦志は反論せず、同じ苗を平地と高畝へ百株ずつ植えた。

 三日目の夜、夏嵐が来た。

 朝、平地の区画は鏡のような泥水に沈んでいた。菜園長が勝ち誇ったのは最初の十分だけだった。

 高畝へ落ちた雨は、細い溝から中央へ集まり、白い泡を立てて畑の外へ流れていく。鐘一つ分、十二分後には畝の肩から水が消えた。平地区画では昼になっても長靴が抜けず、根を一本引くと酸っぱい臭いがした。

 弦志の畝から抜いた株は、白い根を細く広げていた。葉の重さを量ると、同じ百株で平地は十一貫、高畝は十九貫。浄化石は一個も使っていない。

「雨が少なければ逆に乾く!」

 ボルクは言い返したが、溝の端には木栓があった。晴天なら閉じ、雨の日だけ開く。弦志が栓を抜くと、残っていた水まで一息に消えた。

 視察に来た王宮購買官は、腐った四十七束と、泥一つ付かない青菜を並べた。単価は同じ。収穫量はほぼ二倍。必要なのは高価な石ではなく、農具三本と半日の作業だった。

 購買官は菜園長の浄化石申請を赤線で消し、弦志へ王都菜園四十区画の図面を渡した。

「明日の雨までに、全部へ同じ出口を作れ。完成した区画から宮廷の年間納入契約を付ける」

 小作人たちは給金札を握り直し、一斉に鍬を持った。