雪竜が盗んだ靴下
城下町では三日続けて、干した靴下が片方ずつ消えていた。
犯人が見つかったのは、雪の朝だった。路地裏の物置に、白い幼竜が靴下の山を抱えてうずくまっていたのである。吐息だけで壁に霜が走り、駆けつけた兵士たちは剣を抜いた。
「雪竜だ。凍らされるぞ!」
幼竜は牙を見せた。だが、靴職人見習いのユルゲンは、牙ではなく床を見た。雪の上に点々と残る足跡が、薄い赤に染まっている。
冬の道には、氷を溶かすため砕いた塩石が撒かれていた。幼竜の柔らかな肉球は乾いて裂け、歩くたびに血がにじんでいる。盗まれた靴下は宝ではない。痛む足を包むためだったのだ。
親方には遅いと叱られるユルゲンだが、客の靴擦れを見つけることだけは誰より早かった。足が痛ければ、王も竜も同じ歩き方になる。
「怖いんじゃなくて、歩けないんだ」
親方は鼻で笑った。
「竜に靴でも作る気か。お前は人間の靴さえ満足に仕上げられん」
ユルゲンは答えず、自分の厚手の靴下を脱いだ。蜜蝋と羊脂を混ぜた手入れ油を指先で温め、幼竜の前に置く。白い鼻が匂いを確かめたあと、傷ついた前足が一歩だけ差し出された。
触れた肉球は氷のように冷たい。
ユルゲンは裂け目へ油を薄く塗り、柔らかな布を巻いた。さらに盗まれた靴下の中から大きさの合う二足を選び、踵を詰めて、紐のない小さな履き物に仕立てる。針を動かす間、幼竜は一度も唸らなかった。
四つの足を包み終えると、幼竜は物置の中をそろそろ歩いた。血はもう落ちない。嬉しくなったのか、尻尾で雪を巻き上げ、兵士たちを白くした。
笑いをこらえるユルゲンの前で、幼竜はごろんと仰向けになった。ふわふわの腹を見せ、もっと撫でろと短い前足を振る。
親方の手から、見習い解雇の紙が滑り落ちた。
ユルゲンが腹毛へ手を埋めると、表面は雪のように冷たいのに、奥には小さな炉の熱があった。四本の靴下足を空へ向けた幼竜の重みは、彼の膝を沈ませるほど確かだった。