青い封筒の順番

県立病院の総務に入って半年の安積小鈴は、入札日の朝だけ、受付机が舞台の袖に見えた。業者は封をした見積書を置き、何も知らない顔で去っていく。午後には勝者が決まる。

寝具洗濯業務の締切十五分前、紺色の帽子をかぶった男が青い封筒を三通出した。封筒には、それぞれ別の会社名が印刷されていた。

「一番、二番、三番の順でお願いします」

男はそう言った。小鈴が会社ごとに受領簿へ署名を求めると、男は一瞬だけ迷い、三つの社名の横に違う名字を書いた。筆跡は変えようとしていたが、最後の払いだけは全部、左へ跳ねた。

開札では、男の言った順番どおりに金額が並んだ。一番の会社が最安、二番が十万円高く、三番がさらに十万円高い。総務部長は「三社の競争性は確保された」と読み上げた。

小鈴は受領簿を見直した。記載時刻は十一時四十六分、四十八分、五十分。しかし、正面玄関の入館記録にある業者来訪は一件だけだった。入館者名も、三社のどの代表者とも違う。

決裁会議で部長が契約書を回したとき、小鈴は受領簿の原本と入館記録を机に置いた。

「三社は別々に提出したことになっています。でも、封筒を持ってきた人は一人です。署名も、その人が三人分を書きました」

部長は、代理提出だと言いかけた。

「代理なら委任状が必要です。三社とも添付されていません」

小鈴は青い封筒を裏返した。封緘用の管理シールは、041、042、043。市内で一社にしか卸していない連番だった。

院長が契約書の最終頁を開き、印鑑を持ったまま受領簿へ目を戻した。

小鈴は念のため、玄関カメラの静止画も用意していた。男は三通を扇のように持ち、同じ黒いペンで受領簿へ続けて書いている。映像時刻は十一時四十六分から四十七分までの一分間だけだった。受領簿に記された二分おきの時刻は、提出を別々に見せるため、後から総務部長が書き足したものだった。数字の濃さだけが違っていた。

会議室では、青い封筒が三通、最初から一つの束だったように並んでいた。院長の印鑑は、その束の手前で止まった。