青果店救出記録

【七月二日 午前八時】

青果店の店先に、傷のある桃十二個。

味に問題なし。見た目のため贈答用にできず。

店主、値札へ〈訳あり〉と記入。

手伝いの中学生、札を裏返し、

〈ぶつかった跡あり。今日が食べごろ〉

と書き直す。

午前中に九個売れる。

【七月五日】

曲がったキュウリ二十一本。

客から「切れば同じ」との声。

店主、笑って一本おまけしようとする。

中学生が制止。

「無料にすると、価値がないみたいです。三本百円で、ちゃんと売りましょう」

完売。

【七月十二日】

葉が少し黄色くなったトウモロコシ。

閉店までに八本残る。

中学生の提案で、一本だけ茹でて試食。

甘み十分。

札を追加。

〈今夜のうちに茹でてください。明日まで待たせないで〉

近所の食堂が六本購入。

残り二本は店主と中学生が一本ずつ買う。

【七月十九日】

大雨で客足なし。

トマト一箱が熟しすぎる。

店主、処分を決める。

中学生は、食べられる状態か一個ずつ確認。割れたもの、傷んだものは除く。残りを湯むきし、商店街の共同台所でソースにする。

食堂、パン屋、保育園へ分配。

代金は青果店へ支払われる。

店主。

「捨てずに済んだだけで十分だ」

中学生。

「育てた人には、売れたほうがいいです」

【八月三日】

農家から手紙。

〈見た目の悪い桃を「今日が食べごろ」と売ってくれたと聞きました。傷を隠さず、おいしさも隠さず伝えてくださり、ありがとうございます〉

店主、手紙をレジ横へ掲示。

【八月十日】

店の札をすべて見直す。

〈訳あり〉を減らし、

〈小さいので一人分〉

〈曲がっているので切りやすい〉

〈熟しているので今日のデザートへ〉

など、食べ方を書く。

売れ残り、前年同月の半分。

【最終記録】

食材を大切にするとは、何でも食べきることではない。

傷んだものは安全のために分ける。

まだおいしいものは、欠点だけで呼ばない。

作った人へ感謝し、買った人が最もおいしい時に食べられるよう伝える。

青果店で救われたのは、野菜や果物だけではなかった。

「形が違えば価値も低い」という、店主自身の古い値札も、静かに貼り替えられた。