骨で塞ぐ夜

城壁の裂け目から、月ではなく敵兵の松明が覗いていた。

石工兵ベリオスは崩れた胸壁へ掌を当て、歯の間で修復句を噛んだ。石粉が逆巻き、ひびへ吸い込まれる。同時に左の肋骨が一本、冷たく重くなった。

この術は、術者の骨一本を同じ量の城壁へ変える。骨は抜けるのではない。肉の中で石になり、動かなくなる。

最初の修復で、裂け目は肩幅まで狭まった。だが外から鉤が飛び込み、石をまた剥いだ。

「師匠、もう胸が灰色です」

弟子のナーヴァが支えようとする。ベリオスはその手を払った。

二度目。右の前腕が石になり、指が曲がらなくなった。三度目。左脚の脛が重い柱へ変わり、膝を引きずるしかなくなる。それでも壁の穴は、兵一人が通れる幅まで縮んだ。

そこへ兜が現れた。敵兵が頭をねじ込み、内側から穴を広げようとする。ナーヴァが槌で殴り落としたが、次の顔がすぐ後ろにあった。

「残る骨で大きいのは、腿と背骨です」

弟子の声が震えていた。

「背骨なら、門一枚ぶんになる」

「それを石にしたら、立てません」

「壁は立つ」

ベリオスは裂け目へ背を預けた。敵の槍先が肩を掠める。術句を最後まで唱えると、背骨の一節ずつに冷たさが灯り、腰から首へ駆け上がった。

身体が反り、石の音を立てる。

崩れていた壁が内側から盛り上がり、ベリオスの輪郭ごと裂け目を塞いだ。外で押していた兵たちが石に挟まれ、鉤と指だけを残して落ちていく。

静寂のあと、城内から歓声が起こった。

ナーヴァは壁へ駆け寄った。灰色の石面に、師の片目と口の半分だけが残っている。

「勝ちました。師匠、聞こえますか」

石の唇は動かなかった。代わりに、壁の奥から低い鼓動が一度した。

翌朝、兵たちは新しい控え壁に名を刻もうとした。だが鑿を当てるたび、石の中の骨が痛むように震えた。

ナーヴァだけがそこへ耳をつけた。

人の背丈ほどの支柱の奥で、ベリオスの心臓はまだ動いていた。けれどその身体には、もはや曲がる骨が一本も残っていなかった。