ふたりぶんのろうそく
ぼくといとこは、同じ日に生まれました。
毎年、祖母の家で誕生日会をします。ケーキは二つ。ろうそくも同じ数。大人は「すごい偶然だね」と言っていました。
十歳の誕生日の前、台所で母と叔母が話しているのを聞きました。
「もう隠せない」
「本人たちに選ばせる話じゃない。事実を伝えるの」
ぼくといとこは、廊下で顔を見合わせました。
次の日、四人の親と祖母が居間に座りました。
「二人は、いとこではなく双子なの」
母が言いました。
生まれたあと、母は長く入院しました。父も仕事を失い、赤ちゃん二人を育てることができなかった。子どもを亡くしたばかりの叔母夫婦が、一人を養子として迎えたそうです。
「じゃあ、どっちが本当のお母さん?」
ぼくが聞くと、母と叔母が同時に泣きました。
「生んだのは私」
「育てたのは私」
「どちらも本当だと思ってる。でも、決めるのはあなたたち」
いとこが立ち上がりました。
「決めたら、交換するの?」
「しない!」
大人たちは一斉に言いました。
「じゃあ、どうして今まで嘘をついたの」
今度は誰もすぐに答えませんでした。
叔母が言いました。
「今の家を取られると思わせるのが怖かった」
「でも、秘密にされたほうが怖いよ」
いとこは泣きながら怒りました。ぼくも怒りました。同じ顔ではないのに、泣くと鼻をすする回数が同じでした。
誕生日会は中止になりかけました。
でも、ケーキはもう届いていました。
一つには、ぼくが好きな苺。
もう一つには、いとこが好きなチョコ。
ぼくたちは二つを真ん中で切り、半分ずつ交換しました。
「今日から双子って呼ぶ?」
ぼくが聞くと、いとこは首を振りました。
「いとこもやめたくない」
「じゃあ、いとこで双子」
「長い」
「秘密だった年より短いよ」
大人たちは笑っていいのか迷っていました。
ろうそくを二十本、二つのケーキへ立てました。火を消す前に、ぼくたちは願いごとを声にしました。
「来年から、ぼくらのことを勝手に決めないで」
四人の親と祖母は、きちんとうなずきました。
ぼくたちは同時に息を吹きました。
二つのケーキの火が消え、煙だけが天井で一つになりました。