ぼくの家系図は森です

 学校で家系図を作ることになりました。

 先生は、木の根っこにおじいちゃんとおばあちゃん、その上にお父さんとお母さん、枝の先に自分を書くと言いました。

 でも、ぼくの紙には根っこが足りません。

 去年、ぼくが七歳のとき、病院から「赤ちゃんのときに別の家へ行ってしまいました」と言われました。大人はそれを取り違えと言います。

 ぼくには、いっしょに暮らしているお父さんとお母さんがいます。

 それから、おなかの中にいたときのお父さんとお母さんもいます。

 もう一人、ぼくと同じ日に別の家へ行った子もいます。兄弟ではないけれど、誕生日と病院と、ややこしい気持ちが同じです。

 先生に、どの人を木へ書けばいいか聞きました。

「書きたい人を書けばいいよ」

 でも、それだと一枚に入りません。

 ぼくは画用紙をもう一枚もらい、木を二本描きました。枝をのばして、上のほうでつなげました。

 となりの子が言いました。

「木が二本なら、家系図じゃないよ」

「じゃあ、家系森」

 ぼくは答えました。

 授業参観の日、四人の親が来ました。

 いっしょに暮らすお母さんは、一番前に座っていいのか迷っていました。おなかのお母さんは、廊下にいようとしていました。

「どっちも前」

 ぼくが言うと、大人用の椅子が足りなくなりました。先生が図書室から二脚持ってきました。

 発表では、二本の木を指さしました。

「こっちは、ぼくが毎朝起きる家です。こっちは、ぼくが生まれる前からつながっていた家です」

 次に、二本の枝が重なるところを指しました。

「ここが、これからです」

 教室が静かになりました。

「取り違えられたのに、いやじゃないの?」

 あとで友達に聞かれました。

「いやだよ。みんな泣いたし、ぼくもどの家に帰るのか心配だった」

「じゃあ、どっちが本当の家?」

 ぼくは困りました。

 その日の帰り、四人の親が校門で、誰がぼくの手をつなぐか遠慮していました。

 だから、右手で一人、左手で一人とつなぎました。残った二人には、ぼくのランドセルを片方ずつ持ってもらいました。

「重い」

 お父さんたちが同時に言いました。

「家族は重いんだよ」

 前に誰かから聞いた言葉を使うと、みんな笑いました。

 家系図の木は、根っこが絡まると倒れにくいそうです。

 ぼくの絵は少しごちゃごちゃしています。

 でも、森はたいてい、ごちゃごちゃしているものだと思います。