セルフレジ操作記録_四十七番
セルフレジ操作記録――四十七番
【十八時十二分】
利用者、高齢男性。
商品三点。
食パン、牛乳、誕生日用の小さなケーキ。
会員アプリのクーポンを使用しようとして、画面を閉じる。
再度開く。
閉じる。
操作停止、二分十秒。
後方利用者一名、別レジへ移動。
【十八時十五分】
若い女性が声をかける。
「クーポン、使いますか」
男性。
「孫が送ってくれたんです。使えたら画面を見せて、と言われまして」
女性は端末を奪わず、男性のスマートフォンを手元へ戻す。
「まず、明るさを上げましょう。次に、この四角を画面へ向けます」
読み取り失敗、二回。
三回目、成功。
割引額、百円。
男性、表示画面を撮影。
撮影に失敗し、自分の額だけ写る。
女性、笑わず撮り直しを手伝う。
【十八時二十一分】
会計終了。
男性。
「百円のために、ずいぶん時間を使わせました」
女性。
「お孫さんへ『できた』を送る時間でしょう。百円だけじゃありません」
男性、ケーキを袋へ入れる。
本日は自身の誕生日であり、孫と画面越しに食べる予定と判明。
【十八時二十六分】
男性のスマートフォンに返信。
〈じいちゃん、できたじゃん。ケーキ食べる前に待ってて〉
男性、画面を女性へ見せる。
女性、「クーポンより、こちらが本日の値引き以上ですね」と発言。
男性、意味を考えたあと笑う。
【翌週・十八時十六分】
同じ男性、来店。
クーポンなし。
セルフレジ操作、問題なし。
隣の台で高齢女性がポイント選択画面から進めず。
男性が声をかける。
「急がなくて大丈夫です。私も先週、ここで止まりました」
操作説明。
読み取り成功。
【一か月後】
四十七番レジ付近で、高齢利用者同士が教え合う事例、計六件。
店員からの提案により、台の脇へ椅子を一脚設置。
表示文を追加。
〈分からないときは店員をお呼びください。
隣の人が教えてくれたときは、次の人へ返しても構いません〉
【備考】
本システムは、商品の価格、割引額、操作時間を記録できる。
しかし、百円のクーポンが祖父と孫の会話を一つ増やしたこと。
待ってくれた人の言葉が、別の利用者へ渡ったこと。
レジの前で「できない」が「まだ慣れていない」に変わったこと。
以上は数値化できないため、余白へ記録する。