一分だけ戻る支柱

鉱山の奥で崩落が起きた。

生き埋めになったのは十二人。救助隊長は岩盤を叩き、「向こうから三回返事がある」と言った。まだ生きている。だが支柱を一本外せば天井全体が落ち、迂回坑道を掘れば二日はかかる。空気は一時間も持たない。

荷運び人のバルドは、登録祝いでもらった確定SSR箱を抱えていた。

「今開けろ」と隊長が言う。

「武器なら捨てる。必要なのは、天井を一度だけ支える物だ」

箱を開くと、掌ほどの木杭が出た。

《逆刻の支柱》

打ち込んだ構造物を、最も安定していた一分間へ戻す。

名前を読んだ瞬間、バルドは走った。

「全員、坑口まで縄を一直線に! 合図で引け!」

崩落地点の手前へ木杭を打つ。乾いた音が一つした。

砕けた梁が跳ね上がった。落ちた岩が土煙とともに天井へ戻り、折れた支柱が裂け目を閉じながら立ち直る。崩落直前の坑道が、まるで息を吹き返したように一分だけ蘇った。

「今だ!」

救助隊が駆け込む。奥にいた鉱夫たちは、暗闇で互いの帯を結び、十二人が離れないよう待っていた。救助隊は縄を腰へ回し、呼吸の浅い者から次々に引き出す。戻った坑道の壁には、落盤前に鉱夫が刻んだ退避矢印まで蘇っていた。十一人。最後の一人は足を挟まれている。

残り十秒。

バルドは戻ろうとする隊長を止め、自分で岩の下へ滑り込んだ。若い鉱夫の靴を脱がせ、腫れた足を抜く。肩へ担いだ瞬間、木杭にひびが入った。

木杭の亀裂から砂がこぼれる。残り三秒。

二人が境界を越える。背後で、戻っていた岩が再び落ちた。轟音と風圧が坑口まで駆け抜けたが、縄のこちら側には十二人全員がいた。

坑口では家族たちが声を上げた。泣く者より先に、救護係が毛布と水を回す。隊長が人数を三度数え、名札も照らし合わせ、バルドの肩を殴るように抱いた。

「荷運び人じゃない。今日から救助班の先頭を歩け」

バルドが返事をする前に、砕けた木杭から金の文字が舞い上がる。

《消耗型SSR〈逆刻の支柱〉――十二名同時救助により、世界記録を認定》