一度だけ壊れる盾
鋼巨人の拳が迫る中、碓氷ツカサは耐久値一の丸盾を門の溝へ差し込んだ。
《破損固定》
戦闘中に壊れた装備は、その場へ固定され、戦闘終了まで動きません。
《初心者の丸盾》
防御力:1
耐久値:1
「そんな盾じゃ一秒も持たない!」
避難民を乗せた荷車が城門へ殺到している。門は十秒ごとに閉まり、巨人を倒すまで開放できない。最高級の盾で支えても、門の圧力に押されて位置がずれた。
ツカサは巨人の拳を盾へ誘う。
衝撃。丸盾は一撃で砕けた。だが破片は光になって消えず、門の溝へ食い込んだまま青く固定される。下りてきた鉄扉が、厚さ数ミリの木片で止まった。
《戦闘終了まで移動不可》
門が開いたままになる。
「全員、先へ!」
荷車が通る。巨人は門を壊そうと拳を振るうが、固定された破片は耐久値を失った後なので、もう壊れない。最弱の盾は防具として一度しか役に立たず、壊れた後だけ無敵の楔になった。
攻略隊は巨人のHPを削り続ける。ツカサは武器を持たず、逃げ遅れた子供を抱いて門へ走った。最後の荷車が抜けた瞬間、隊長が巨人へ必殺技を放つ。
「待て、倒したら戦闘が終わる!」
巨人が崩れ、勝利音が鳴る。固定効果が解除され、盾の破片も消えた。門が轟音とともに閉じる。
だが城内に残ったのは攻略隊と巨人の残骸だけだった。避難民は全員、外へ出ている。
ツカサは閉じた門を見て笑った。討伐が遅すぎたのではない。ちょうど、最後の一人が通るまで続いたのだ。
《鋼巨人討伐成功》
《城門防衛失敗》
《避難人数:全住民》
門の外で、助けられた子供がツカサの腕に残った盾の革紐を見つけた。木板は消えても、持ち手だけは装備品ではなかったため残っている。
「盾、なくなっちゃったね」
「役目を終えたんだ」
城内側から巨人の核が淡く光る。門を閉めたのは追撃ではなく、避難路を敵から隠す最後の動作だった。ツカサは巨人にも守る対象があったのだと知る。
《防衛対象を訂正します――守るべきものは門ではなく、門を通る命でした》